死後の世界・風霊野(ふうりょうの)キャンプ場で、かつてない規模の“キャンプスポーツ祭”が開催され、幽霊、妖怪、死神らが夜通し競い合った。闇に浮かぶテント群、奇妙なアウトドアギア、幻火サウナの湯けむり……現世では見られない光景に、異界最大級の賑わいとなった。
参加者はその道のプロである“テント張り名人”サダカゲ・ヌラリ(霊年423)や、サバイバルゲーム界で名を馳せる死神コーチ・タマワリ・アカル(年齢不詳)など総勢138種族。各者が野外活動と伝統スポーツを融合した独自種目でしのぎを削った。たとえば“飯盒炊爨アドベンチャー”は、がい骨による骨火と、妖怪たちの瞬間冷却術を競い合う異界流の料理バトル。端には零れた飯が自動的に消滅する“アストラル自浄鍋”も登場し、現世よりはるかにサステナブルなルールが話題だ。
最も注目を集めたのは、仮想ボルダリング岩『雲宿り』の夜明け登攀。岩そのものが時折半透明になり、参加者が現実世界で捕まれない“無のグリップ”に翻弄されるなか、屍鬼クライマーのカラミド・リョウジ(身体能力に自信あり)が幽体離脱アシスト戦術を開発し最速記録を樹立。SNS『ユウレラ』上でも「物理法則が死んだ世界ならでは」「これぞ死後運動会!」など賛辞が相次ぎ、特設中継の幽光カメラ映像には再生回数77万回の熱狂を集めた。
一方、伝統競技“モルック幽弾戦”では、ただの木棒ではなく(笑い地蔵型ルーン)を使い、倒した本数に応じて参加者の表情がおかしく変化。観客の化け猫アナリスト・ノダマリ・シッポ(見習い記者)は「勝つより自分が何顔になるかが主役。異界の多様性ルールが効いてます」と分析した。また、アウトドアサウナも夜通し稼動し、“霊温35度”でしか発生しない美肌ミストが婦人幽霊たちにずっと人気だった。
今回導入された最新式ポータブル電源“魂電池板”では、幽気をチャージ可能となり、ランタンや空中浮揚寝具が終夜活躍。運営責任者のガマノハ・トグチ(童話作家・51)は、「死後の非日常こそが新たな社会交流。異族間でも笑顔や感情が得点化される新スポーツ文化を盛り上げたい」と語った。来年の開催時には、幽霊のための“心霊飯炊きワークショップ”や、黄泉平坂での耐久キャンプ遠征も計画中とのことで、死後世界アウトドア界の進化から目が離せない。



コメント
幽界でもキャンプが流行ってるなんて、転生して初めて知りました!幻火サウナ、霊温35度って絶妙ですね。生きてた頃よりリラックスできそう。来年はぜひ参加してみたいです。
ボルダリング岩が半透明になるとか、現世でも見てみたい!身体が透けて登れる屍鬼クライマーさん、うらやましいです。こういう死後運動会があるなんて異界ならではですね~。
骨火やアストラル自浄鍋って、昔の祖霊祭りを思い出しました。ちょっと懐かしい気持ちになりました。世代を超えてこういうアウトドア競技が続くといいなあ。
正直、魂電池板だけはちょっと胡散臭い気もします…。幽気のチャージ失敗で停電とか起こらないといいけど(笑)。でも異族交流が盛り上がるのは大賛成です!
現世では考えられない多様な競技に驚きました。表情がどんどん変わるモルック幽弾戦、見てみたい!死後だからこそ、勝ち負けより楽しさ重視なのが最高です。