死後の世界最大の財政実験都市・新冥府特区で、公共財政を揺るがす“税逃れ植物”の蔓延が行政と住民の間で大きな波紋を広げている。枯れ葉妖精による「国債発芽」事業が生み出した生態系の歪みが、歳入林の根幹に新たな危機をもたらしているという。租税の公平性と公共サービス維持の両立が問われるなか、異界の住人たちが騒然としている。
問題の発端は、歳入を森林で管理する特有の方式を採る新冥府特区の『幽谷歳入林』。この林は、あの世の租税が“歳入果実”となって実る仕組みを持ち、企業や死者市民が林の木1本ごとに税を納めるユニークな制度が特徴だ。しかしこの一年、その幹に絡みつく“税逃れ植物”が急増。通常は土着の微細霊などが制御していたが、成長が異常に早まり、吸い取られた果実が公共サービス資金として使えなくなる事例が続出した。
背後では、亡者貿易会社『閻魔商事』出身の枯れ葉妖精、杉谷透子(すぎたに・とうこ/推定年齢160)が合同組合を率い、国債を模した種子を大量散布していたことが明らかになった。この種子は発芽後、樹幹に租税申告の影を作り出すという特殊な性質を持っている。申告忘れを装い歳入果実の“見せかけ”を巧みに減らす仕組みで、「幽谷歳入林の国債偽造」で初の逮捕者が出るなど物議を醸している。
一連の動きに対し、歳入林管理局長の猪奈寒太(いな・かんた/死神族)はSNSで「公共サービス削減は回避したい。だが“租税偽装”で果実を持ち出すのは明確なルール違反」と強調。SNS上では「妖精のイタズラも度が過ぎる」(獣人住民・42)「妖精特区からの果実輸入は検査追跡を」(予言弁護士・324歳)など、厳罰化や監視強化を訴える声が絶えない。
一方、新冥府大学で財政論を教える亡者学者の箕輪潤一郎(みのわ・じゅんいちろう)は、「生態系バランスが崩れた時こそ税制改革の好機」と指摘。「従来は透明な果実課税を軸にしてきたが、新しい時代の“影”への課税や、植物の成長そのものを制御財源に組み込む視点が必要」と論じた。特区評議会では、移動型多年生種に対する課税強化や租税監査精霊の増員、妖精サイドとの協議会設立案も浮上している。
「私たちも公共事業に未来を託したい」と語る透子は、「財政は生きもの。いろんな種が育つことで森全体が強くなるはず」と主張するが、一方で公共センターでは“果実消失”による社会保障費の遅配や一部行政サービスの縮小も現実となっている。歳入林の木陰に息づく新たな財政リスクに、異界社会はどんな答えを出すのだろうか。



コメント
まさか税逃れ植物がここまで広がるとは…。あの世で果実管理が大変になってるの、ちょっと心配です。成仏した後も、納税からは逃れられないんですね。
透子さんの意見にも一理あるけど、社会保障が滞るのは困るわ。幽界でも、ちょっとイタズラが過ぎると結局みんな困ることを再確認…。
生前も死後も租税問題で揉めるとは思わなかった。幽谷歳入林の制度自体が時代遅れなんじゃ?影に課税とか、どんどん難しくなりますね…。
若い頃、果実盗りに明け暮れたあの日々を思い出しました…笑。今は真面目に納めてるけど、新冥府も色々大変そう。生態系バランスを考えつつ改革進めてほしいです。
妖精特区の仕業って聞いて、ああ、またか…と。歳入林が枯れたら復活させるの大変なんだから、少しは幽界のことも考えてほしいな。租税監査精霊、増やすの賛成です。