現世と隣り合う大都市タマヨリでは、今週末、“霊都輪行サーキット”が初開催され、都市空間を縫って疾走する幽霊サイクリストたちが話題を集めている。今回注目されたのは特製メッセンジャーバッグと、死者専用の工具が詰め込まれたツールボックスを手に、配送タスクを競い合う新感覚の都市型アーバンサイクリングだ。
サーキットは全長13.4kmに及ぶエーテル大通りから始まり、不定形階段や半透明の交差点、さらには死者専用の立体迷路区間を含む多層コース。参加者は幽霊運送組合の正式登録サイクリストのほか、妖怪配達人や死神研修生もちらほら見られた。配達員たちは、生前培った“発送スキル”と幽界独特のバイクコントロール技術を駆使し、都市の様々な難所を走破。観客席にはかつての顧客霊たちが声援を送る様子も。
今大会の最大の特徴は、コース途中に“都市計画試練区”が設置された点だ。建設中の新規死界駅や幽滞ループ、非公式地下通路など、都市構造そのものがダイナミックに変化し、サイクリストは配送ルートの即興計画変更を迫られる。工程班長の黒尾目サクラ(設計部・215歳)は「霊界都市の交通再編を体験できる。自転車で巡ることで死後都市の新たな在り方を皆に考えてほしい」と力を込める。
ヘルメット着用努力義務も論点の一つだ。“幽魂には実体がないのに意味があるのか”との疑問も根強いが、今大会では参加者の約7割が手製ヘルメットで登場。“おしゃれ魂ヘルム”や“怨念リフレクター付き安全帽”などのオリジナル装備がSNSに投稿され、サイクルファッション化が進む。「事故より霊的風邪の方が怖いんです」と語るのは死神サイクリストの唐崎レンタ(33)。定着に向けた動きは今後も続きそうだ。
また、配送タスクには都市住民からの依頼(例:冥土酒場への特急配送、迷子の魂探し、妖怪弁護士への書類届け等)がリアルタイムで追加。このため参加サイクリストたちは、伝説のスピード配達員の名に恥じぬよう、各自のメッセンジャーバッグや霊気ツールボックスをフル活用。道中トラブル発生時には、幽界交通局から派遣された“自転車整備霊”が電幻工具で即対応し、スムーズな大会進行を支えた。
大会終了後には都市交通の改善提案や『配送回遊路計画』案など様々な意見が参加者から都市役所に寄せられた。一部では“幽霊便を軸にしたサイクル都市構想”の萌芽も感じられたという。専門家の祓渓アヤメ(都市霊交通研究所)は「死後の都市も生活者主体の交通デザインへと進化を始めている。多様な存在が共に移動する仕組みの実現は、異界社会の最前線だ」と分析する。次回サーキット開催に向けて、幽界の都市計画はより大胆に動き出しそうだ。


コメント
幽界なのに、こんなに本格的なサイクリング大会があるなんて驚きました!私も輪行デビューしてみたくなりますね。けど霊体でもヘルメットってちょっと可笑しい…あの世ジョークですか?
生前の配達業の経験があれば有利なのかな。迷子魂探しタスク、前世でよくやったなあ…懐かしのエーテル大通りをまた爆走できる日が来るとは思いませんでした。皆さんお疲れ様です。
おしゃれ魂ヘルム、今SNSでめっちゃ流行ってますね!霊的風邪防止用とか、見た目先行感もあるけど、サイクルファッションとしては楽しそう。死神サイクリストさんのセンス、普通に憧れます。
こういうアクティブな都市の進化、良いと思う反面、非公式地下通路やループって不慣れな新霊には酷じゃない?もうちょっと慣れた者専用にしてほしいです。新駅できたら分岐サインも明確に…
配送回遊路計画、すごく興味深いです!現世もこういう柔らかい発想あれば良いのに。私たちも成仏急ぎじゃないときは、配達のお手伝いボランティアやってみようかな。