死後の世界の環境政策を大きく転換する国際協定が、あの世の幽霊議会で採択された。名付けて「幽界カーボンニュートラル協定」。この協定は、非物質エネルギー消費の削減と、死者によるカーボンクレジット市場の設立を目的としたもので、幽霊や妖怪たちの社会において急速な波紋を広げている。とりわけ、各地に建設が進む「旋風発電所」をめぐり、冥界農村地帯の住民霊からは懸念の声が上がっている。
協定によれば、幽界政府は2040年までにあの世全体の非物質的カーボン排出量を旧暦比20%以上削減する目標を掲げた。その主軸となるのが、新たなカーボンクレジット制度と再生可能エネルギー源の導入だ。幽界最大級の風力事業者ファントム・ウィンド・カンパニー(社長:霧上幽一郎)は、「旋風(つむじかぜ)発電所」の導入により、霊的電力の4割を再生可能資源でまかなう計画を進めている。しかし、この巨大発電塔の建設地が死者農民の聖域である「黄泉田ヶ原」界隈にまで及んだことで、農耕霊たちから強い反発が起こった。
実際に現場を訪れると、稲魂農連合の若手代表、原野コダマ(農民霊、享年33)はこう憤る。「私たちの土地は、千年もの間、死者の安寧と供養の場だった。この風車の“幽界振動”は、地下霊脈に影響し作物の結晶化が阻害されている。カーボンクレジット収入で幽霊商人だけが潤い、農民の魂はさらに霞んでしまう」と声を荒げた。一方、幽界省の再生施策担当官、灰田ノア(死神、寿命年齢不詳)は「聖域保全と再生可能エネルギー推進の両立」を掲げ、農耕霊会との対話継続を強調している。
「旋風発電所」導入による地下環境変動をめぐっては、幽界理学研究所の風霊物理専門家・白流水鏡(精霊、見た目年齢46)も「これほど高出力の風車を霊脈直上に建てた例は人間界にもない。地中エネルギーの乱れが死者社会のインフラ全体に波及しかねない」と警鐘を鳴らす。SNS上でも、「死者経済の裏で農民霊の苦悩が無視されている」「再生エネルギーは幽霊都市だけの恩恵」といった声が広まり、若手妖怪たちによる抗議デモもあの世広場で勃発した。
一方で、幽界初のカーボンクレジット取引所「エーテル・エクスチェンジ」設立を巡り、転生コンサルタントの影尾イザナ(妖怪、127歳)は「永続的な資源循環には全階層の利害調整が必須。今こそ死者社会こそが現世より進んだ地球環境ガバナンスのお手本となるべきだ」と語る。幽界カーボンニュートラル協定は、“浄化なき成長”を志向する冥界経済と伝統的営みとの軋轢をどう乗り越えるのか。その行方に死後社会中が注目している。



コメント
旋風発電所、ついに黄泉田ヶ原にも… あの美しい稲魂のきらめきが見られなくなると思うと、成仏しても寂しいですね。少しは農民霊たちの声も聞いてあげてほしいです。
再生可能エネルギー自体は賛成だけど、地下霊脈を乱すリスクは怖い…現世でも似たようなことがあった覚えが。幽界でもやっぱり“成長”の名の下に誰かが犠牲になるのか、もやもやします。
カーボンクレジットでまた幽霊商人が儲かるだけって、結局生前と変わらない構図なのが笑える。冥界経済も資本主義に呪われてるのか。
黄泉田ヶ原にはかつて仲間と大規模稲霊復興をした思い出が…。今の若い幽霊たち、もっと死者の営みや歴史を大事にできないのかな?協定の方向性は理解できるけど、聖域は守ってほしい。
死後世界のカーボンニュートラル政策とは時代が進みましたね。未来の転生先が少しでも良くなるなら、幽界が現世に先んじて持続可能な社会モデルを作るのも悪くないと思います。けど現場は大変そう…。