眠らぬ幽界図書館が始めた“亡霊ウェルネス・デー”運動──読書と運動が融合する新習慣

幽かな霧と共に浮遊し読書を楽しむ幽霊たちが集う図書館内部の夜景写真。 ウェルネスとセルフケア
幽界図書館で始まった“亡霊ウェルネス・デー”の新習慣を静かに体現する一場面。

満月が3度まわった夜、異界都市シルトリムの中心に建つ幽界中央図書館が、“亡霊ウェルネス・デー”と題した新たな取り組みを発表した。書架の本はひとりでにページをめくり、読者は幽気のベンチで浮遊しながら瞑想するという、幽界ならではの静寂に包まれたこの大図書館。ひんやりとした空気が漂う静かな空間に、多くの亡霊たちが、心身のバランスを保つために集まり始めている。

きっかけは、館長で千年書霊のソウマ・リオン(推定享年不詳)が定期統計をまとめるなかで、幽霊利用者の間で未練や疲労感が増加し、“心霊ショック症候群”が蔓延している実態に気づいたことだった。ソウマ館長は『現世のフィットネスや読書療法だけを真似ても、死後の住人にはしっくり来ない。私たちの状態=エクトプラズムの質を高め直す必要がある』と語る。そこで考案されたのが、“亡霊ウェルネス・デー”。館内に配置された“浮遊読書トラック”や“感情デジタルデトックスルーム”など、死後ならではの工夫が随所にちりばめられている。

新設された“浮遊読書トラック”は、利用者が本を片手に、壁や天井を自由にゆるやかに旋回できる構造。“重力の枷から解放されることで、物理的なコリを幽気レベルで解消する”とした幽界健康省の推奨エクササイズだという。また、館内各所に設けられた“閑古鳥リトリート”では、静謐な音波に包まれて存在を薄め、SNSや未練フォーラムからの通知を完全遮断できる。幽霊主婦(301)のカムリ・ミトノさんは『ここでデジタル帳を眺めずに数時間過ごすと、肉体があった頃より心が軽い。気付けば透明度もいくらか戻っていました』と体験を語る。

死後の栄養は現世と異なり、“記憶の断片”や“未練エネルギー”が重要と言われてきた。しかし最近では、ソウマ館長らの提唱で、蒸留CBDポーションや霊気由来サプリがウェルネスの主役に浮上。館内カフェ“曙ブレンド”では、不安を和らげる即席CBD霊茶や、読書中の集中力向上を図る透明ベリーのケーキも人気だ。『未練が薄れると記憶も消えそうで不安だったが、きちんと栄養データを管理すれば、知識と自我の輪郭は保てる』(歴史幽少女キリア・ゼンナさん)という声も。

夜明け前には、参加者同士が『好きな一節』を朗読し合うエクトプラズム体操が恒例となった。姿かたちのない霊体にも、鍛錬や休息は必要だという新常識が広がる。幽界中央図書館のホームページには、“セルフケアは未練の放置とも違う、前向きな第二の人生(死後)をつくる小さな一歩”というメッセージが掲げられている。今後も亡霊たちのウェルネス習慣が広がりを見せそうだ。

コメント

  1. 幽界図書館、ついにここまで進化したんですね〜!昔は静かに漂うだけの場所だったけど、今はウェルネスまで気遣うとは。浮遊読書トラック、転生前にも体験してみたかったです。

  2. 正直、未練ショックって自分も最近感じていたところで…閑古鳥リトリートに興味津々です。もうSNSの輪廻ネタは疲れたので、図書館で存在を薄められる日が待ち遠しいです。

  3. 亡霊ウェルネス?エクトプラズム体操??生きてた頃の健康ブームが死後も続くなんて笑。でも、透明ベリーケーキはちょっと美味しそうなので、図書館カフェ行ってみたいです。

  4. 幽界生まれなので図書館通いは当たり前ですが、館長の本気の取り組みには敬服します。読書しながら浮遊なんて贅沢!でも未練を薄くするのって本当に大丈夫なのか、少し心配もあります。

  5. 成仏しかけてる身にとっては、こんなウェルネスデーがもっと早く欲しかった…!記憶の断片や未練エネルギーだけじゃなく、ちゃんとケアして第二の死後生活を楽しむの、大事ですね。