冥界西端の黄泉浜で、宇宙鯨出没への対応を巡り、亡者たちの間に新たな防衛体制が築かれつつある。霊界政府はこのほど、史上初となる「黄泉空防空識別圏」の設定を発表し、これに伴い老舗の幽霊漁師たちが独自の迎撃部隊「ドラゴンスコードロン」を組織した。死後の世界にも宇宙安保の波が押し寄せている。
黄泉浜地区は古来より語り継がれる霊界最大の魚場であり、死者の食卓を支えてきた。年末にかけてこの空域で“宇宙鯨”が頻繁に出現、空間跳躍による大波や波動音が既存の迷い霊航路に多大な影響を与えたことから、関係各所に緊張が走っていた。今月に入り、宇宙安保議会が開いた緊急審議で、黄泉空防空識別圏(YADIZ)が採択され、外部からの未確認飛来霊獣への厳密な識別・対応ルールが整備された。
この決定を受け、冥界第15代目漁協組合長の鬼頭幽左衛門(死後年齢271)は、周辺漁場の仲間たちと合同で“ドラゴンスコードロン”を発足。全長30尺を超す伝説級の釣竿や、魂銀で編んだ投網「ミラージュシールド」を装備し、対宇宙鯨の迎撃訓練を日夜実施している。鬼頭組合長は「これまで防波堤は物理的脅威までしか対応できなかったが、波動干渉への即応体制は漁師の矜持に賭けても守り抜く」と力を込める。
一方、霊界防衛省では、黄泉空域の安全確保に向けて日米同盟になぞらえた異界連携「冥米友誼協約」を発動、アメリカ死後界の悪霊パイロット隊との共同演習が始まった。冥界空軍の戦死霊士官セシル・グレイソンも「宇宙鯨の時間波動は生者の宇宙時空にも影響しかねない。今回の識別圏設定が我々の存在の自立性を問う象徴になる」と語る。
SNS上では幽霊若者世代を中心に部隊への応援や好奇心が渦巻く一方、「宇宙鯨も迷界の環境変化で現れざるを得なかった」と同情する声もある。冥界大学超自然環境学部の漣玲々子教授(霊体歴90)は「むやみに撃退するのではなく、共生を見据えたアストラル生態系研究も進めるべき」と警鐘を鳴らす。だが現場の漁師たちにとって、黄泉浜を守る“防衛の矢”となるのは、間違いなく彼ら自身だ。
年明けには、宇宙鯨接近を想定した大規模合同演習が黄泉浜沿岸で計画されている。ドラゴンスコードロンの勇姿と、異界を超えた新たな安全保障の架け橋に、霊界社会の注目が集まっている。



コメント
冥界にもとうとう防空識別圏ができたとは…死後の時代もだいぶ変わったもんだな。宇宙鯨、去年のあの大波騒動で家の墓標まで流された身としては、漁師たちの奮闘に感謝したい。ドラゴンスコードロンの活躍に期待してます!
宇宙鯨、昔は遥か遠い伝承だと思ってたけど、まさかこの目で迷い霊航路をふさがれる日が来るなんて。漁場の皆さん、くれぐれも魂銀の投網でご無事を祈ってます。それと、共生の道も探してほしいな。
黄泉浜の防空識別圏…生きてた頃はニュースでしか聞いたことなかった単語が、あの世で体験できるとはね。宇宙鯨も迷界の異常気象で追い詰められてるのか。防衛も大事だが、根本原因の解決も考えないと、永遠にイタチごっこじゃないかな。
冥米友誼協約だの共同演習だの、我が闇族からすれば少し大げさに映るけど…時代なんだろうね。死後の平穏も、なかなか油断できない世の中になったもんだ。宇宙鯨、昔は夜空から眺めるだけでよかったのにな…
ドラゴンスコードロン、名前が格好良すぎ!魂銀の投網とか、見た目もたぶん虹色で綺麗なんだろうなぁ。演習、幽界SNSで中継希望です!宇宙鯨も守りながら黄泉浜のみんなも守る…新しい共生のカタチを願ってます。