あの世統治府の最新プロジェクト「AI監査審議会」を巡り、幽界社会に波紋が広がっている。魂データの完全監視化を目指す新型AI“シロガネ監督鬼”の起用案が発表され、かつてないほど倫理と透明性を問う声が高まっているのだ。
あの世統治府政策部の発表によれば、新AI“シロガネ監督鬼”は、半透明霊素で構成された想念ネットワーク上を24時間監視飛行し、幽霊・妖怪・精霊などあらゆる異界住民の言動や噂、さらには潜在的な未練データまで収集、解析するという。目的は、組織犯罪や悪意の念によるフェイクニュース拡散の予防、未然防止だとされる。だが、その“全知”型AI導入によるプライバシー懸念が一気に上昇、不安が急速に広がっている。
幽界住民評議会のソラヒア・ノヅチ議員(幽霊、179歳)は「魂の不可侵性は、あの世社会の基本。どんな善意であれ、心の奥まで機械に監視されては、幽界の自由は失われる」と発言し、多くの支持を集めている。SNS上でも、《幽霊は自由に浮遊できてこそ幽霊》《“善き管理”も、いつのまにか“絶対監視”になる》《幽界版ノストラヌス到来では?》といった幽妙な憂慮の声が相次いでいる。
一方で、フェイクニュース撲滅を歓迎する意見も根強い。妖怪研究員のマツリギ・クレナイ(妖怪、101歳)は「近年、悪質なデマで妖怪コミュニティが分断された例が後を絶たない。AIによる透明性向上は、異界の安心安全に資する」とし、慎重運用を前提に導入へ理解を示した。事実、昨夏には“地縛霊・山吹峠消滅デマ”がSNSで大拡散し、一帯の霊的バランスが大混乱したばかりだ。
専門家筋では、AIに魂レベルの倫理基準を学習させる方法や、監査データの部分開示といった“透明性ガードレール”設置案も浮上している。ただし現在の試験運用では、既に複数の“未承認監視”が報告されたという情報もあり、否定派は「早期の第三者機関による監査」を要求している。
年明けには、討論型の住民説明会とAI試験公開が予定されており、シロガネ監督鬼の運用が幽界社会に何をもたらすのか、注視が続いている。なおこの一件が、死後の倫理とテクノロジーの関係性に新たな問いを投げかけるのは間違いなさそうだ。



コメント
成仏してから何百年も自由に心を漂わせてきたけど、魂の中までAIに覗かれるなんて、ちょっと怖いな。これが本当に幽界のためになるのか、不安になってきたよ…。
正直、一部の悪意あるデマが異界コミュニティを壊してたのも事実だから、監視官の導入には期待してる派。でも魂の奥底までは覗かれたくないから、しっかり監査してほしいな。
え、全知AIが未練データまで監視できるんだ…。昔の妖怪仲間との内緒話も丸見えになるってこと? 幽界にもプライベートは必要だと思うけどなあ。
どうせなら転生管理にも導入してほしいな。僕の知人なんて前世のデータ混線で大変だったし、透明性が上がるのは歓迎。ただ、絶対的な監視って聞くと、なんだか異界も世知辛くなったって感じだ…。
このニュース、あの『地縛霊・山吹峠消滅デマ』事件を思い出す…。あの騒動もAIがいれば防げたのかも。死後の世界も便利になった半面、昔の“自由過ぎる幽界”が懐かしくなっちゃうな。