肥後国半透明市――午後の涼気をたたえた河原沿い、三丁目の池畔議事堂がざわめきに包まれた。妖怪・幽霊・動物霊・新参の河童移民とが一同に介し、議論の中心になったのは「技能実習河童制度」。この奇妙な施策を巡り、多文化共生への現実的な課題と、異界住民たちの期待が複雑に絡み合った。
半透明市では3年前、国内の池や沼が水質汚染と人口減少で廃れつつあったことから、東方の河童集落より“技能実習河童”を受け入れることを決定した。彼らは古来より医療・農業・築堤工事に長けており、妖怪たちの生活基盤を支える重要な労働力となることが期待されていた。しかし、吸魂精霊連盟の発表によれば、受け入れ当初の500体に対し直近までに390体が“水源の郷愁”や言語障壁で定住に悩み、やむなく里帰りするケースが増えているという。
議会に登壇した新進気鋭の幽霊議員・淡雪トモヨ(43)は、こうした河童たちの定住支援の拡充を訴えた。「彼らにとって我々の文化は透明すぎて、言葉も暮らしも溶け合いにくい。せめて河童語で案内される教育支援センターや、寮の水槽環境の改善が急務です」と主張。これに対し、伝統派のぬらり本一郎(221)は「異界の住民として最低限の『浮遊心得』を学ばぬまま定住することは、地元住民の不安を拡大させます」と警戒感をあらわにした。
実際、現場ではさまざまな交流努力が行われている。昨春から市立やせ型小学校で始まった『多文化きゅうりプロジェクト』では、河童児童と地元の子どもたちが一緒に野菜を育て、収穫祭を開く光景が定例となった。保護者の間では「うちの娘が河童式水泳を教えてもらい、風邪ひかなくなった」と歓迎する声があがる一方、「ホーム沼と違う水質で河童族の子が体調を崩した」と心配する意見も散見される。
SNS上でも熱い議論が交わされている。市民幽霊の嵐村ミナコ(享年67)は「河童さんの得意分野を生かせば私達にも新しい仕事が生まれる」と積極姿勢。一方、化け狸の西園悟(157)は「夜中の河原が騒がしくなった」と苦言を呈する。多文化共生には技術と心の両輪が不可欠だ。議会は来月、河童族の代表・清流シュンこと“シュン河童”の意見陳述を予定しており、池畔の未来を左右する新たな一歩となるか注目が集まっている。



コメント
三丁目の池で昔よく浮かんでた身としては、こんな大きな議会が開かれるなんて夢みたい。河童さんたちの“水源の郷愁”、ちょっと分かる気がする…異界も住みにくくなったのね。
技能実習河童制度、正直最初は反対派だったけど、多文化きゅうりプロジェクトのおかげでウチの尻子玉にきゅうりが混ざるようになって嬉しい。河童語ガイドセンター、賛成!
河童たちの医療技術、もっと活かせばいいのに。水槽の問題とかは氷結霊に応援頼めばすぐ良くなるはず。議会もたまには地縛霊の視点を学んでほしい。
毎度思うけど、伝統派の方々は“浮遊心得”ばかり押し付けすぎじゃない?時代が変わっても、不安ばかり煽るのはあの世サイドの悪しき風習だと思います。
河童児童がうちの子の友達になってから、泣き虫だった子が自信を持てるようになりました。最初は言葉が通じず戸惑ったけど、今ではかっぱ巻きパーティーが恒例行事です。壁の向こう、意外と温かい世界でした。