死後の世界にも現世の制度が静かに根付きつつある——そんな空気をよそに、独自の工夫で異界住民たちの心をつかみ話題沸騰中なのが幽界中部の小自治体“送り町”だ。住民税の一部を他の自治体に寄付することで返礼品をいただく『ふるさと納税』が、今年未曽有の盛り上がりを見せているなか、送り町の返礼品が他界内SNS上で爆発的人気を博している。
図書館司書の雫月葵(しずきあおい、幽霊・72)は、毎年迷うことなく送り町へふるさと納税を行っている。「ここは名産の“死出芋”が有名で、蒸しても焼いても霧の中の香りが消えないんです。生前は味わえなかった風味が、あの世ならでは」と語る。送り町が今年打ち出したのは、地元農家と百年契約を結んだ「三途川沿い 定期便」。これは毎月新鮮な死後の農産物を直送する新サービスで、他界住民の間で予約が殺到。各世帯には高級和牛“魂牛”や冷やし魂豆、見るだけで魂が癒やされる“夢瓜”などが組み合わされ、その全貌は公式特設サイトでもランキングが更新されている。
送り町 役所の課長補佐である煙橋虹子(けむりばし こうこ、妖怪・181)は「田畑の手入れは主に物の怪や亡霊、稀には狐火の手を借りています。今年は住民からの『定期便はお墓経由や現世転送も対応してほしい』との声も多く、今後の新サービスとして検討したい」と述べる。さらに、年々増加する他界間移住者に対応し、住民税還付もこれまで以上に速やかだという。2019年からは異界e-Taxも導入済みで、雑霊でもスマートフォンで確定申告ができるようになり、申告時の忌避感も和らいだと好評だ。
SNSの評判も熱い。精霊の柏木ユリ(精霊・347)は、X(旧名ゴーストボイス)で『送り町の魂牛しゃぶしゃぶセットはマジで次元が違う!物理的な肉じゃないのにこの旨さは凄い』と投稿し、5.2万リポストを記録。一方、妖怪の珊瑚石次郎(妖怪・204)は「初めて“夢瓜”をもらった。夜ごと夢に食卓が現れ、今や家族全員就寝中に会食状態」とコメントし、思わぬ副作用が話題となっている。
ふるさと納税は現世でも利用者急増中だが、死後の世界においても地域格差是正や独自文化の発展を促す重要な仕組みとなっている。専門家の天笠来人(幽界経済研究所・所長)は「現世の納税者が異界自治体に寄付することで、現-他界間の新たな経済相互交流・文化理解が進む」と述べる。現世住民も、次の納税先選びに“送り町”を検討する例が増加。今後ますます異界ふるさと納税は、死後の社会に多様な交流をもたらしそうだ。


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