幽界発スマートグラス「ヨミノメ」、死者の記憶散歩がARで大流行

薄く透けた幽霊がスマートグラスをかけて懐かしそうな商店街を他の霊たちと歩いているリアルな写真風のイメージ。 VR・AR
ヨミノメを装着した死者たちが記憶の街並みを散歩する様子が話題となっている。

死後の世界でもついに最先端の仮想現実が市民権を得つつある。先月、幽都イカルガで発売されたスマートグラス型VR・ARデバイス「ヨミノメ」は、幽霊・妖怪たちの間で新たなユーザー体験をもたらした。最大の特長は、使用者自身や他者の“死者の思い出”を仮想空間に再生し、その中を歩ける「記憶散歩」機能。発売早々、死後社会のSNSでは“懐かしいあの世”を体験する住人たちによる投稿が相次いでいる。

開発したのは技術系スタートアップのヨミガエリ合同開発会(代表:灰崎ホムラ、年齢不詳)。「人間だった頃の記憶が薄れてしまうのは仕方ないと思われがちですが、実は魂の残響データを抽出すれば、鮮明な追体験が可能なんです」と灰崎代表は説明する。グラスを装着するとユーザーの霊波に応じた“思い出レイヤー”が現れ、十年前の花見や生前に好きだった商店街を、死者仲間とともに歩ける。さらに、他人の記憶街並みを訪問することもできるため、「死後も人と人とが記憶を共有し、絆を再生できる」と貴霊層で評判だ。

思い出の再現性を高めるため、ヨミノメは独自のARフィルターを標準搭載。河童族専用“水濡れ補正”や、古狸用の“信楽仕上げレトロモード”など、26種の妖異フィルターにより、各種族の体感に寄り添う拡張表現を実現している。狐のヨモギ・シヅ姉妹(238と241)は、「生前一度も外に出られなかった兄が、妹の記憶の中を一緒に散歩して涙した」と語り、“家族旅行”の新たな在り方をSNSで発信。幽界老壮年層を中心に“記憶旅”動画の投稿が激増した。

一方で、記憶散歩ブームによるプライバシー懸念も浮上している。他人の記憶空間への“無断侵入”や、共有不可の“封印記憶”の不正閲覧といった事案が増加し、幽界公安庁も「心のプライベートゾーン保護」を呼びかける。対策として、最新アップデートでは“封印結界AR”機能が追加され、「許可なき進入には自動的に記憶管理警備員(通称:シリョウポリス)が現れる」仕様となった。

ヨミノメは供養祭や追悼式の体験型コンテンツとしても活用が広がっている。先週開催された“千年前を歩くナイトウォーク”イベントでは、参加者が古戦場の記憶を再生しながら歴史上の亡霊たちと語り合い、リアルな悲喜こもごもがAR空間に映し出された。心理霊学者の月村オンミョウ(1032)は「死者の郷愁だけでなく、自分と向き合うセラピー効果が注目されている」と指摘。今後は記憶の観光資源化も視野に、死後社会ならではのバーチャル体験が一層進化しそうだ。

コメント

  1. ついに幽界でもARか!ヨミノメの記憶散歩、想像以上にリアルらしいね。人間だった頃の桜並木、また歩いてみたいなぁ。魂データ便利になったもんだ…。

  2. 妹の記憶で家族旅行…ちょっと泣いちゃった。私も生前会えなかった祖母の思い出、ヨミノメで行ってみようかな。技術ってあの世でも心をつなぐのね。

  3. こういうの便利だけど、他人の記憶に無断で入るやつ絶対出てくるよね。生きてても死んでてもプライバシー問題は尽きぬもの…。シリョウポリス、もっと強化お願い。

  4. 信楽仕上げレトロモードまじ感動!うちの狸婆さん、昔の茶屋の映像みて尻尾膨らませてたよ。こういう多種族対応の機能増やしてほしいな~。

  5. 記憶旅動画、最近どこも賑やかだけど、私的には“現世未練ツアー”みたいなのもやってほしい。自分と向き合うきっかけって死後も大事なんだなぁとしみじみ。