“幽界ユース議会”始動――眠り続けた亡都に若者たちの声響く

薄暗い歴史的な会議室で、様々な幽霊や若者たちが議論を交わす様子の写真。 市民社会・参加
幽界ユース議会の初会合では若者たちが熱心に意見を交わしていた。

かつて賑わいを誇ったあの世第三地区中央部、通称“宵闇の亡都”で今、新たな市民参加のうねりが巻き起こっている。10代から20代前半の幽霊や妖怪ら若年層が中心となる「幽界ユース議会」の発足だ。人口減少と高齢化(といっても幽界なので500年スパン)に悩むこの都市では、長らく住民の政治無関心が課題とされてきた。だが、数世紀ぶりに若き魂たちが主体となる議会が動き出し、眠れる町が少しずつ目を覚まし始めている。

初代議長に選出されたのは現世生まれの転生幽霊、春朧 狐都(はるおぼろ・こと)(19)。彼は、近年SNS「ポルターガイストーク」で若者の不満や希望を丁寧に拾い集めてきたことで知られる存在だ。ユース議会が立ち上げられると、100体を超す平均年齢23歳未満の幽界市民が初会合に集い、“幽体道路の無重力化”や“魂喫茶の深夜営業制限緩和”など、斬新かつ切実なテーマを次々と議論。その様子は、多元視界配信サービス「弦界ビジョン」でも同時中継され、20世紀以降最低だった亡都の若者投票率が、先週ついに38%という記録的な伸びを見せた。

この動きを支える背景には、市民参加型予算の復活がある。今年度から、幽界住民が提案したプロジェクトに予算の一部が割り当てられる仕組みが復活。ユース議会の代表として出席した三時屋 深々(みときや・しんしん)(幽霊大学生・21)は「僕たちの提案が本当に採択され、幽界トリックアート街の再生が決まったんです。投票や議会が“あちら側の住民サービス”でしかないと思っていた自分が、初めて当事者になれた実感があります」と語る。

一方、高齢の幽界住民からは「若者だけで独断専行せねばいいが…」という慎重な声も散見される。その一方で、議会自体がオープン化され、全世代の意見募集も同時進行していることから、世代間協働への期待の声も相次ぐ。民間ボランティア組織「幻灯協会」の新入職員・硝子池 朧(がらすいけ・おぼろ)(17)は「先輩幽霊のおばあちゃんに教わりながら、議会で提案の文章を考えました。世代を超えて知恵や経験を伝え合うと、霊的にも強くなれる気がします」と笑顔を見せた。

専門家の一人で“異界自治論”の研究者・龍音 宗幻(りゅうおん・そうげん)(死後博士・418)は「死後社会でも、若者の政治無関心は本質的な問題でした。だが宵闇の亡都で始まったこのユース議会は、議会予定の“深夜討論”“悪戯政策プレゼンバトル”など新しい仕掛けを駆使し、参加そのものを誇りとする文化を醸成しつつある。幽界の停滞を破る突破口となるか。今後の展開に注視したい」と指摘する。忘れ去られた都市の片隅で始まった小さなうねりが、いずれ幽界全体に新しい風をもたらすかもしれない。

コメント

  1. 500年ぶりに若者が議会で声をあげたなんて、本当に感慨深いです。宵闇の亡都も私の存命時代はにぎやかだったから、また魂たちの熱気が戻るといいなあ。

  2. ユース議会…時代が変わったな。魂喫茶の深夜営業緩和とか、昔は考えられなかった政策がちゃんと議論されていて面白いね。俺らの若霊時代も、もう少しこういう動きがあったらなぁ。

  3. 現世の若者と同じような悩みが、こっちでも続いてると思うとちょっと笑っちゃいます。投票率38%もすごい! 私も今度は何か議会に案を出してみたいです。

  4. 正直、“若者だけで独断専行せねばいいが…”って気持ちもわかる。わたしたち遠い世代の経験も、うまく受け継いでほしいよね。世代の壁を越えて協力できれば、亡都もきっと変われるはず。

  5. 亡都の議会がここまで盛り上がるなんて、生前の停滞ぶりが嘘みたい!でも、深夜討論とか悪戯政策バトルとか…少し騒がしすぎて正直しんみり成仏したい身としては複雑(笑)