世界初の幽霊専用宇宙エレベーター建設現場で、異例の“無重力クラゲ大量発生”事故が発生した。未曾有の事態をきっかけに、異界開発庁とあの世交通省は、地球外環境における超常生物の思わぬ適応力について再評価せざるを得なくなっている。
舞台となったのは、冥界太平洋沖の静かな海底にそびえる“幽岬タワー”。この場所は、何世代も海底に眠ってきた幽霊技師たちによる宇宙開発プロジェクトの拠点だ。代表技師・波乃井くらげ(享年42)は「幻想粒子化技術」により物質・霊体双方が行き来できる昇降路を設計。準備作業の最中、突如として深海から無数のクラゲ型幽霊——通称『未練クラゲ』が浮上、制御フロアの無重力区画に侵入した。
未練クラゲは従来、海底墓域でさまようのみだったが、今回の事故調査により、無重力環境下で予想を超える増殖・浮遊能力を発揮することが判明した。昇降路の霊気フィールドが一時的に解放された際、クラゲたちは次々に静電気尾を伸ばして遊泳し、エネルギープラントや制御コンソールに群がった。作業中の技師の目撃談によれば、「まるで夜光クラゲの天の川だった」(構造解析担当・壱岐見しんねん、年齢不詳)という。
エレベーター本体への深刻な影響は回避されたが、現場の調整班は半日近くにわたり、低温エクトプラズマシールドによるクラゲの誘導・封じ込め作業を強いられた。異界生物学ラボの天桶うすら(霊界博士・59)は、「未練クラゲが幽界の重力バリアを次々に回避したのは、重力波に寄生する特殊な霊質変換能力のため。未知の進化メカニズムとしか言いようがない」と語る。
事故発生から一週間後、現場では再発防止策として、昇降路の『未練クラゲ自動識別・遮断AI』の設置および、クラゲの霊圧を利用した“幽界発電”の実証実験も始まった。SNS上では、「クラゲをパートナーにするほうが効率的」(充電幽霊・オウラコン)、「幽界の海と宇宙がつないだ、新たな命のルートが見えてきた」(無職幽霊・須川まさき)といった投稿が拡散され、あの世の住民や妖怪技術者の間で議論が白熱している。今後も異界生物と先端宇宙技術の思わぬ邂逅が、新たな共生と再利用の道を切り拓く可能性が注目される。


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