死後の世界でも、“お金”に関する悩みは消えないらしい。幽都モノクローム区の霊魂たちのあいだで、今、「見えない財布」なる新型家計管理術が異常なブームを巻き起こしている。幽界金融リテラシー校の導入授業をきっかけに、投資や年金、そして「収入」そのものの概念までもが急速に再定義され始めているのだ。
始まりは、幽界金融リテラシー校の新任講師フィルター真以子(享年32)の実践講座だった。生前大手会計事務所でキャリアを積んだ真以子は、“幽魂にも家計簿が必要だ”と説き、独自に開発した『見えない財布』システムを導入した。これは可視化できない収入や消費エネルギー、霊界特有の“結縁ポイント”の増減を記録・分析するもので、たちまち学校内で話題を呼ぶこととなる。
この新たな家計管理法は、幽界金融商品の活性化にも直結した。「人間の世界では投資信託や株式が人気だが、わたしたちの世界にも“記憶債”や“思念積立預金”といった独自の金融商品がある。生前の未練や愛着、あるいは生きた頃の趣味への投資が、死後生活の質を左右するのです」と語るのは、幽界ファンド協会の天音シュウジ代表(死神、推定年齢180年)だ。幽霊たちは今、家族や友人との“思い出経済圏”に資産の一部を投じる傾向が強まっているという。
こうした流れのなか、幽霊専用SNS『霊ネット』では、見えない財布記録をめぐる体験談が飛び交う。自称“省エネおばけ”ことエノキ結衣(浮遊霊、39)は「家計簿は面倒だったけれど、思念消費が見える化されて自己管理が楽になった」と投稿。さらに、50代の自営業霊・箕輪巧は「年金魂(ゴーストペンション)の運用成績が上がり、死後生涯チャレンジ貯金に成功した」と喜びを語る。
一方で、「見えない財布」の副作用も指摘され始めている。『霊気ストレス症候群』と呼ばれる、支出を過剰に意識しすぎるあまり霊的活力を失うケースが金融リテラシー校で報告された。これに対し真以子講師は、「管理も度を越せば重荷になる。幽界の魅力は“忘却”と“ゆとり”にもあるはず」と警鐘を鳴らす。死してなお続く金融教育——幽界社会における“見えない裕福さ”とは何なのか。その答えを霊魂たちは、今日も家計簿(のようなもの)とともに探している。



コメント
もう家計管理からは解放されたと思ってたのに、幽界でも財布管理が必要になるなんて驚きです。でも見えない財布なら、ついつい使いすぎも気付けるのかも…生前もやっておけばよかったかな。
見えない財布って便利そうだけど、霊気ストレスになっちゃう人もいるんですね。幽界でも“忘れること”は大事なんだなぁって、なんだかしみじみしちゃいました。
生前から通帳も家計簿も三途の川に流したのに…また管理することになるとは(笑)でも“結縁ポイント”や“記憶債”、妙にノスタルジックで面白いです。今度投資してみようかな。
幽界にも年金運用やSNSで家計簿自慢…なんだかこの世と変わらないですね。いっそ思念消費よりも、たまにはパーッと霊気使い果たして生まれ変わるのもいいかも?
結局“豊かさ”って物じゃなくて思い出や未練なのかな。見えない財布で管理できない幸せ、忘れずにいたいです。真以子先生、たまにはゆとりを推してくれるの共感します!