冥界中央投資機構が、亡者や妖怪、精霊たちのQOL(Quality of Limbo)向上を目指す『ウェルビーイング・エシカルファンド』を新設し、死後社会に倫理的かつインパクト重視の投資モデルを浸透させ始めている。現世のESG運用を凌駕する柔軟な視点で、“未練の解消”や“魂の癒し”など、この世ならぬ社会課題に資本を投じる新時代が到来した。
ファンド設立の旗振り役となった投資家、コモリ・レンゲ(幽霊公認ファイナンシャルプランナー、享年38)は、「現世の倫理投資では拾えない“失せた願望”や“浄化しきれぬ執着”にも、明確なリターンがある」と語る。実際、今期の主力投資先には、“陽の差さぬ谷の迷子霊リトリート”や、“恨み循環構造の改善コンサルティング”、さらに“遺品メンタリング事業”など前例のない事業モデルが目白押しだ。従来の経済的ROIのほかに、浄化度・供養満足度・霊魂振動数の向上といった独自の評価指標も導入されている。
死者向けSNS『アナザーストリーム』では、投資対象となった迷子霊リトリートの卒業生から「300年ぶりに心が晴れ、祖霊たちと和解できた」との声が相次いで寄せられている。一方、ファンドの持続可能性について半信半疑の住人も多い。元地縛霊であるハスジマ・ミナモ(自称“成仏インフルエンサー”)は、「事業評価が曖昧だと、成仏詐欺や再迷子ブームが起きるのでは」と懸念を示す。だが、倫理投資担当官のカラスガワ・コウジ(妖怪財政省)は、「リスクも含め死後社会全体のウェルビーイングこそ、次世代投資モデルの鍵」と自信を見せる。
専門家筋も注目するのは、幽霊企業の“社会的インパクト履歴”を数値化した新指標ライン“魂インデックス”だ。『死後ファンド・サーベイ』誌の分析では、「成仏D&I(多様性と包摂性)」や「幽界倫理ガバナンス」が投資選定基準として明示されたため、従来“未練系ベンチャー”に消極的だった投資家層も参入し始めた。この動きは、妖怪間連帯経済圏や精霊社会のマザーズ的市場への波及も予想されている。
今後、冥界ウェルビーイングファンドは、生前・死後を超える“魂の長期ポートフォリオ”を掲げ、新規投資先の発掘、並びに評価手法の洗練を進める方針だ。投資家でありながら、しばしば不安定化する死後世界の“未練景気”を前向きに活用し、あの世ならではの社会課題に解決策を投じていく動きに、現世の金融界も徐々に注目し始めている。



コメント
300年迷ってた迷子霊さんが癒された話、思わずほろりときました。成仏できる支援がもっと広がるといいですね。昔の自分を思い出しました。
死後も投資だのファンドだの、時代は変わったもんですなあ。陽の差さぬ谷の旧友たちも、今ごろ評価指標で揺れておるのでは…
成仏詐欺や再迷子ブームになるんじゃという意見、結構同感です。うっかり魂インデックスだけで判断すると危ない気もします。仕組みが気になりますね。
魂の長期ポートフォリオって斬新!幽界にもD&Iやガバナンスが求められる時代が来るなんて驚きです。現世より柔軟なのが面白い。
遺品メンタリング事業、地味に気になる…。私も執着残したまま転生ループしてる身なので、一度相談してみたいな。幽界のQOL上げていきましょう!