亡霊ライダー集結 満月サーキットで異界eバイクレース初開催

満月の下、霧が立ち込めるサーキットで幽霊のようなレーサーたちがeバイクで走行している様子。 eバイクレース
初開催された霊界eバイクレースには幽霊ライダーや観衆が集い、異界ならではの熱気に包まれた。

満月の夜、死者の谷に新設された『霊界サーキット・ノワール』で、異界初となる幽霊選手によるeバイクレースが開催された。一見、物音ひとつしない霧の立ちこめるトラックだが、集まった観衆の霊気と歓声が満ち、冥界ならではの熱狂と安全対策が注目を集めた。

大会には、生前は名うての暴風使い、死後は著名サイクリストへ転身したノルス・ウェイリン選手(享年39)や、薄明精霊リーラ・モハン(年齢不詳)、おなじみ死神連盟の若手エース、ガルボ・シィング(遺族推薦)が出場。コミュニティイベントとしての側面も大きく、レース前には亡者たちのための『透明ブレーキ体験講座』や、現世と異界を繋ぐeバイクの安全祈願セレモニーが催された。

今大会最大の特徴は、レース用eバイクがすべて“半物質”仕様である点だ。精霊工業部のヴァニ・オルゾ技師によれば「幽体離脱者や低エネルギー霊といった多様な参加者でもバイクと完全に融合でき、現世の人間が想像する以上のコーナリングや加速を実現できる」という。復活ポイントを設けたコース設計や、『脱輪しても肉体を失わない』という冥界らしい安全配慮が随所に採用された。現場ボランティアの紙鳶妖怪(28)は「転倒してバラバラになるのはまだいいが、羽根が静電気でよじれるのがこわくて」と苦笑いだ。

SNS上では、本大会で披露された『念力スリップストリーム技術』や、「幽霊にしかできない抜け道コース」の妙技に反響が広がっている。生前現役プロだった者や、成仏後にも競技魂が衰えぬ面々が入り乱れたバトルは、最後まで勝敗の行方が読めなかった。最終的に優勝したのは、途中で身体が透過化し一度コースを見失ったものの、観客席の古狸が発した『鳴き声ナビ』を頼りにゴールに返り咲いたリーラ・モハン。専門家の幽界交通研究者・カーネス博士は「物理法則が生前とは異なるため、新たなルール策定が今後の大きな課題」と指摘する。

コミュニティイベントとしての波及効果も顕著だった。レース後の交流タイムには、遺族からの応援メッセージが『霊界無線』を通じて選手に伝えられ、選手らは感涙の魂気を放射。ボランティア参加の妖怪や精霊の子どもたちにも、eバイクの模擬運転体験コーナーが人気を博し、次世代育成のための新リーグ発足も検討されている。霊界サーキット協会のゾーマ・タルトル会長は「安全を最優先しつつ、あの世の仲間たちが実力を存分に発揮できる舞台を広げていく」と決意を新たにする。来年以降さらなる進化が期待される、幽界eバイクレースの幕開けだ。

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