霊界最大の美術イベントのひとつ「サンズ・アートフェスタ」で、今年初となる“iPadドローイング展”が開催され、その革新性と死後世界ならではの表現が大きな話題となっている。亡者や妖怪、はては転生待機中の精霊たちがデジタルペンを手に、現世の技法を独自に発展させた多彩なデジタルアートが三途川河畔ギャラリーにずらりと並んだ。幽霊画家による輪廻転写印刷や、あの世Vtuberとのコラボ作品も続出し、異界ならではの“データ遊離”現象も鑑賞者の注目を集めている。
同展を主催したのは、不動の人気を誇る幽霊アーティスト・奥霊沙夜(オクダマリ サヨ/没後172年)。生前に油彩画壇で名を馳せた沙夜は、蒐集したiPadやタブレットを良縁寺霊市から調達。「霊界には画材も色彩も時間も有限だが、デジタルなら思念で何度でも描き直せる」と語る彼女は、いまや霊体の不安定な指でも理想の“思念線”が引けるアプリ(通称:クリスタ霊界版)を使い、百鬼夜行を題材とした新感覚ドローイングを披露している。会場では筆先からぼんやり滲む“念写ブラシ”効果や、作品に憑依した未練ファイルが突然出現するなど、あの世特有の事故すら新アートとして好評だ。
目玉コーナーの一つ、“輪廻プリント・ラボ”にも多くの来場者が詰めかけた。ここでは亡者アート愛好家の鬼美川 歌子(キミカワ ウタコ/享年54)が開発した新技術が話題だ。彼女はなんと現世へ一時的に意識を転送、Vtuber専門のドローイング配信サイトとリンクし、描いたイラストデータを“転生印刷機”で可視化させることに成功。「自分の生前の姿をバーチャル上で描いてみたかった」と語る若き幽霊ドローイング作家の中には、配信中に思わず現世リスナーとチャット交流しそうになる場面も。SNSでは霊界用ハッシュタグ「#サンズiPad展」のもとで、亡者同士が自作ドローイングを自慢しあうポストが飛び交っている。
今回の展覧会では新たな潮流も見られた。没後まもない妖怪クリエイターの蟲隠(ムシガクレ)ヒルネ(享年不詳)は、現世の人気Vtuber“白狐ユキノ”とのコラボを実現。死後世界の風景に現世Vtuberアバターが溶け込む幻想的なiPadアートや、妖怪特有の“不可視レイヤー”を使った実験的作品を披露した。ヒルネは「死後も押し絵的に推し活を続け、アートと推し文化の融合を図りたかった」と語る。クリエイター同士の界域を超えた共同制作は今後も増加が予想される。
美術評論家の輪我丸 照月(リンガマル ショウゲツ/霊界美大教授)は「デジタル機器は霊界で爆発的に普及しつつある。特にiPadは幽霊や妖怪の不安定な形状に適応しやすく、手の通り抜けや念によるショートカットが逆に作画に個性をもたらしている」と解説。サンズ・アートフェスタ運営委員会は「将来的には死者同士の即席お絵かきバトルや、現世と霊界の合同展示といった新企画も検討中」と明かす。現世のデジタルアートと死後世界の文化が交錯する時代は、すでに静かに始まっている。


コメント
三途川沿いでこんなに賑やかな展覧会が開かれるなんて、転生待ち中の身としてはうらやましい限りです。デジタルがあの世でも流行る時代なんですね。念写ブラシ、私も使ってみたい〜!
現世のVtuberとコラボだなんて、時代も本当に変わったものですね。輪廻印刷で我が家系の肖像もデータ化できるなら祖霊会の寄り合いにも使えそう。念によるショートカット失敗にはご注意を!
さすが奥霊沙夜さん、死してなお革新を続けてて尊敬します。あの世Vtuberとか不可視レイヤーとか、現世の流行がここまで完全に転写されるとは思わなかったなぁ。幽体でもアートに参加できる自由が嬉しい。