死後の世界・北陰州に位置する幽界学園では、近年、話題となるSDGs実践プロジェクトが進行中だ。主導するのは知恵深い霧狐の環境教育士スイハナ・ゴロウ(狐霊、年齢不詳)。吹き溜まる霧の中、学園生たちが水と生命の循環を学ぶ体験型プログラム「水の歌プロジェクト」が、異界の未来を変えつつある。
取り組みの中核となっているのは“霧水再生システム”の開発だ。校舎屋上から集めた黄泉の霧を、精霊の協働による分離機“クモノイト”で浄化し、再利用可能な水源へと変換するこの装置のおかげで、かつて水不足に悩まされた学園専用コミュニティガーデンも現在は青々と潤う。生徒たちは季節ごとに花鬼リンゴや月見草を栽培し、その収穫物は近隣の幽霊高齢者施設へフードロス削減を兼ねて寄贈。水循環に直結したガーデン管理業務には男女・種族の別なく全員が平等に参加するルールも設けられ、ジェンダー平等の理念もしっかり根付いている。
さらに、学園の制服リニューアルも話題を呼んでいる。かつて卒業生が残した思い出のマントや帯、透明化し使われなくなった小物を集め、いまの生徒たちがデザインし直す“アップサイクル・ファッション”が、都市部の精霊中学校へも波及中だ。企画部長である竹鬼ミドリ(精霊、15)は「幽霊も実体を持った思い出も、捨てるのではなく重ねて活かすのがこの世界流」と語る。こうした取り組みは、地域の異形企業とのコラボレーションによる持続可能な資源活用、そしてグリーンインフラ整備にも結びつきつつある。
水の歌プロジェクトの成果を発表する年次フォーラムでは、生徒代表による“命の循環”演劇も披露された。舞台に立つのは様々な出自の霊児童と教職員たち――魂の多様性を象徴する顔ぶれだ。会場で来賓のシャジク・モロヒロ(死神CSR連絡会長)は「死後世界にこそサステナブルな社会基盤が必要。幽界学園の先導的SDGs取組が異界全域へ拡がることを期待している」とコメントした。
SNS上では「水の歌を自分たちの村でも!」「幽界の子どもが地上よりエコ」と驚きの声とともに、自発的に他校へのプロジェクト導入を呼びかける署名運動まで起きている。死後社会の協働と想像力、そして小さな命たちの創意工夫が、新たな循環型社会を静かに切り拓いている。



コメント
水不足に悩まされたあの頃を思い出しますね。あの世も時代とともに進化してるとは…成仏したての私には感慨深いニュースです。
霧狐さん達、本当に知恵者!地上よりも幽界の子どもたちの方が環境に配慮してて、ちょっと誇らしい気分になったわ。うちの霊村にも広まってほしい!
制服のアップサイクル、なんだか懐かしい魂の香りがしそうで良いですね…。私も転生先で古マント取っておけばよかったと少し後悔(笑)
『命の循環』演劇、観に行きましたが本当に涙が出ました。幽界に生きる多様な魂の共生…この温もりは現世よりも優しいかも。
SDGsって結局、生きてても死んでても同じ課題があるのか…。人間界もこんなふうに上手くやれば良かったのにって、少し皮肉に思ってしまいました。