近年、死後社会で進むデジタル技術の発展とともに、個人情報流出問題が深刻化している。そんな中、幽界公安局が運営する情報監視課が今回、前代未聞の魂データ流出事件への対応を発表し、異界コミュニティでは波紋が広がった。
事件が発覚したのは、詩晶町在住の妖狐・藍島ルリ(享年82)が自身の“思念電話”に謎のスパム幻影が大量に届いたことがきっかけ。調査の結果、同町霊団の住人約120名の“記憶ログ”や“生前トラウマ履歴”が、地獄サーバーを介して他界SNS「アノ世LINE」に無断で転送・拡散されていた。中には生者時代の恋文、秘密の願い事、さらには未練リストのスクリーンショットまでもが、第三者の間で晒されていたという。
幽界公安局のデータ保護官・翡翠院ヨミ(不詳)は記者会見で「現世ではCookieとGPS追跡が問題視されたが、幽界では魂の“波長タグ”こそ最大の個人情報だ。今回は規制緩和を隙間に悪用され、大量流出に至ったことを重く受け止めている」と憤りを隠さない。公安局では現在、流出源とみられる“降霊コンサル”のカラス妖怪・漆羽クロ(201没年不詳)を通信傍受法違反の疑いで捜査中。
利用者側の懸念も高まっている。自称・霊的アナリストの真名井イツキ(幽年230)は「魂データ活用のための法は整備中だが、既に“異魂マーケティング”業者がSNS内でデータを二次利用しているケースが後を絶たない」と警鐘を鳴らす。SNS上では『消せない記憶を誰が守る?』『死後界にも“忘れられる権利”を』など、デジタル・プライバシー保護を求めるハッシュタグがトレンド入りしている。
今後について、亡者議会では魂データ規制法(仮称)の緊急審議入りが議論されている。だが地底界の通信事業者や降霊カフェチェーンの一部は、『サービス利便性が損なわれる』と反発の姿勢も見せており、法規制の行方に注目が集まる。果たして死後の社会における“個人情報”と“公共安全”のバランスはどこにあるのか——未曽有の監視社会論争が本格化しつつある。


コメント
あの世に来てまで記憶ログが流出するなんて……本当に安心して未練とも向き合えませんね。昔の恋文なんて見られたら恥ずかしすぎます。魂データの管理、もっとしっかりしてほしいです。
やっぱり暗黒SNSは信用できないと思った。死んでようが地獄でもネットの闇は深い。幽界公安、がんばって取り締まってほしいけど、転生者はもっと慎重にならないとですね。
『忘れられる権利』の話、同感です。死後もずっと自分の記憶が誰かに利用されるのは嫌。そういえば生前もSNSトラブル多かったけど、あの世こそプライバシー守ってほしい。議会頼みましたよ~。