異界最大手の幽霊系重工「影乃宮営繕」が、死後都市全域にわたる“ゼロエミッション電力網”の運用を本格スタートした。発表会には半透明の産業精霊や流離う妖狐技師、現世の科学研究員の憑依体までが顔を揃え、まるでエネルギーの祭典のような熱気を帯びた。長らく怪しげな灯火や魔力変換炉に頼ってきた死後社会だが、いま、省エネルギーとエネルギー保存を最大限に両立した新世代のインフラに大きな期待が寄せられている。
今回の電力網は、水素エネルギーを死後特有の「魂素」と融合させ、従来型の魔法式蓄電池と高効率風力発電機群、さらには幽核炉——死者しか扱えない原子力——までを連結する多層構成。蓄電池は、名門墓所で採取される“残響の欠片”を利用することで、従来比で最大12時間のエネルギー保存に成功したという。管理は“魂脈エネルギーマネジメントシステム(SEMS)”で全自動化され、担当のエンジニア役である幽霊技師・月影セツジ(享年38)は「全区画のエネルギーフローが可視化され、死者も生前同様に停電の心配なく過ごせる」と胸を張る。
特筆すべきは今年から配備開始の“風妖連結式タービン”。これは夜毎山間部を駆ける風の精霊たちと共同開発した技術で、バイオマス発電器『朽葉燃炉』や、古い物語に端を発する“語り部再興炉”を補助する形で設置された。従来、妖怪の活動が干渉しやすく予測が困難とされてきた異界の風だが、風の精霊・カザゴエの協力で出力変動も最小限に抑えられた。今後は下層冥界の冷気流も有効利用し、昼夜問わず安定した発電が見込まれる。
一方で、導入初日の夜には一部の幽核炉が“怨霊波”の影響で異常に高温化し、監督官ルゾウ・テンマ(死後区行政第六課)は「死者が感情を強く持ちすぎるとエネルギー系統に不可思議な変動が発生する。適切な鎮魂と冷静なオペレーションが今後の課題」と語る。SNS上では『#永続点灯』『#停電ゼロ』といったタグが話題になり、一部の高齢幽霊からは「明るすぎて昔を思い出せない」などノスタルジックな声も。
異界住民の評判も上々だ。主婦(没後62)の山霧コエは、「バイオマス発電による“香り付き夜灯”が家庭を和ませてくれる」と微笑み、夜間巡回を担う死神補佐のシラハエ・カゲロウは「従来の魔灯より安定し、迷子の魂も減った」と語る。省エネルギー化とエネルギー保存技術の進化が、死後都市の“もう一つの夜明け”を呼び寄せている。一里塚大学死者工学科の蘆堂ナルキ助教授(享年49)は、「この取り組みは死後社会の持続可能性を高める大転換点となるだろう」と結論付けている。


コメント
セツジさんのコメント、心強いですね!かつての停電中に迷子になってうろついた頃を思い出します。今は魂素と風妖の力で、夜道もあたたかい灯りが続くのが本当にありがたいです。
ゼロエミッションって現世の流行りかと思ってましたが、まさか冥界で本格導入されるなんて。幽核炉の“怨霊波”トラブルにはうなずく部分もありつつ、やっぱり感情の管理が死後も大事なんですね。
昔のほの暗い墓地灯りの方が、風情があった気もします。『#停電ゼロ』は便利だけど、ちょっと味気ないような…もっと幽気漂う照明も残してほしいですね。
風の精霊さんと技師さんたちの共同開発、とても神秘的で良い取り組みだと思います。子供たちも『語り部再興炉』のお話を楽しみにしていますし、魂の再利用って素敵な文化になりそう!
“怨霊波”で幽核炉暴走はちょっと怖いですね〜。死後でも情緒のコントロールが求められる時代になったか…成仏したご先祖さまたち、今の明るさに驚いてるだろうなあ。