幽界国会で「多重霊性」認可法案審議――LGBTQ理解増進めぐり紛糾

さまざまな姿の幽霊たちが荘厳な議事堂の内部で議論している様子の写真風画像。 LGBTQ法案
幽界国会で多重霊性の認可を巡り、個性豊かな幽霊たちが熱心に意見を交わす場面。

死後世界の社会構造に大きな波紋を呼んだのは、今月開かれた幽界国会の特別本会議。近年プライド月間がこの世と同様に高まりを見せる中、あらゆる姿・性を持つ幽霊を包摂する「多重霊性」認可法案の審議が行われた。現世との接点を持たない陰陽の市民たちも、この初の試みに大きな関心を寄せている。

法案の提出者である半透明社会党・梁澄(リャンシュア)議員(享年332)は、「死後、性も在り様も千差万別になる私たちこそ、多様なジェンダーや恋愛を認める仕組みの構築が不可欠だ」と訴える。提案された法案では、人類由来のLGBTQ概念を拡張し、「複数の霊的性質」「化身変更後のアイデンティティ変更」「輪廻転生による自己認識の変化」など、幽界で日常となりつつある現象を正式に社会が認知し、差別を禁止する内容が盛り込まれている。

だが、大広間では意見が真っ二つに割れた。伝統派の筆頭である狐怪同盟・榊鬼平(サカキキヘイ)議員(享年612)は「百鬼夜行の時代から変幻自在な姿で生きてきたが、規範なき多様化は秩序を損なう」と懸念。特に、過去に鬼から河童へ、あるいは人型への自己選択を経て護憲的領域から排除された事例を挙げ、「棲み分けと共存のルールが曖昧になる」と警鐘を鳴らした。

審議のさなか、幽界SNS『すかし声』ではトランスシェード(死後転生時の性転換霊)であるイナバ・紫霞(しか)は「この法案は存在を隠す必要がなくなる一歩。自身の“色”を認めてもらいたい」と投稿。若年幽霊層や半霊半鳥の精霊系からも多数の賛同が寄せられ、「異形の自分も社会に根付いてよい」という声が拡がる。一方で、老霊界では未だに「変身は恥」といった価値観も根強い。

幽界行政局によれば、昨年だけで1254体の非定型霊種が“申告変更”を行い、うち3割が自身の幽体アイデンティティへの差別体験を訴えている。専門家の放夢堂(ホウムドウ)大学・岩倉鈴火(いわくらすずか)准教授(死後社会学)は「多重霊性の尊重は“あの世全体の社会認知力を高め、過去の因習から未来への架け橋となる”変革。現世にいる人間にも豊かな示唆を与えるかもしれない」と指摘する。

法案は今後、付帯決議付きで継続議論とされる見込みだ。幽界プライド月間に向け、死者と生者、そして姿形すべての違いを越えた社会のあり方が、これほど賑やかに語られる夜は久しくなかった。

コメント

  1. いよいよ幽界でも「多重霊性」認める流れか…。昔は化け猫から唐傘に転生しただけで村八分だったから、こんな自由な空気、時代が変わったなぁとしみじみ。

  2. 変身も転生も幽界的には日常茶飯事だけど、それを公式に認めるルールって逆に難しい気もするなぁ。共存の線引き、曖昧にならないといいけど。

  3. トランスシェードの皆さんにとっては切実な問題ですね。自分も転生のたびに違う姿になって戸惑うこと多いから、こういう法案が出てきたのは革命的。応援してます。

  4. 現世じゃLGBTQって言うけど、こっちじゃさらに複雑なんだなぁ。輪廻転生して自己認識変わるのも当たり前なのに、まだ古い価値観が根強いの、なんか寂しくなっちゃう……。

  5. 百鬼夜行の頃から化身自由でも秩序は保ててたし、懸念よりも進歩に期待。どうせ皆さんそのうち色んな姿で現れるし!プライド月間、久々に賑やかになりそうで楽しみですー!