あの世の町・黄泉ヶ原で、年金受給世代の猫族がひっそりと社会復帰を果たしている。定年後、浮遊生活や寝転び日和が常だった猫たちが、“あの世シルバー人材センター”の新たな就労支援事業で福祉分野へ進出。“霊界介護”の現場は、にぎやかさと癒やしに包まれている。
黄泉ヶ原中央福祉施設では今年春から『猫族シルバー介護パート隊』が本格始動した。発案者は占い師と妖精族のハイブリッド、黒田ミズリ（62）。近年、介護や見守りの担い手不足が深刻化するなか、「転生経験豊かで人目を気にしない猫族こそ最強戦力」と目をつけた。体半透明・体温低めの特性を活かし、夜間巡回や“姿現しサポート”係の業務に従事している。
隊員の一人、ハルサワ・クロ（猫族138歳）は「死後も役に立つなんて思ってもみなかった」と語る。クロは元々、寺院の縁側で昼寝を続けていたが、『自動年金ゴースト引き落としサービス』で余裕が出たのをきっかけに、社会復帰を決断。「利用者様の背中に乗ることで、落ち着いてもらえるようになるニャ」と、介護利用者や職員からも評判は上々だ。
猫族シルバー隊が現場にもたらしたのは、安心感とユーモアだけではない。医療介護連携部門では、猫たちの不思議な“あの世アレルギー反応検知能力”を医療ヘルパーと連携させ、初期異常をいち早く発見する効果が認められている。介護職員・フジノマツ ユウリ（幽霊、98）は「体調を崩しがちな入所者がいると、猫隊員がドアの前でゴロンと転がって知らせてくれるので助かる」と笑顔で語る。
施設を運営する冥界福祉公社によれば、導入後3カ月で“深夜徘徊”事故ゼロ、利用者や家族の満足度も2割以上向上したという。SNSでは「#あの世猫隊と暮らす」「#モフ付き介護」などの投稿も急増中。専門家の白むかで大学・小金井オババ准教授（妖怪学）は「死後社会の高齢化で孤独死が問題視されてきたが、就労をコミュニティ作りと結びつける発想が斬新。人間界にも応用可能なモデルだ」と指摘する。
来月には“夜鳴き見守りナイトシフト”や、“ヒゲタクティカルパトロール”など新たな業務拡張も計画中とのこと。死後の世界でさえ猫の手が借りられる時代──異界福祉の現場は今後も予想外の進化を遂げていきそうだ。
コメント
猫族のみなさんが黄泉ヶ原で社会復帰とは、本当に時代が変わりましたね。私も前世では福祉職でしたが、猫の柔らかさと優雅さは幽界でも最強の癒やし。背中に乗られた利用者さん、成仏寸前の幸福でしょう。
猫族年金ぐらしに少し憧れてましたが、こうしてシルバー介護で活躍しているのを見ると、ぼくも老後は寝てばかりいないで一度挑戦してみたくなりますね。#あの世猫隊と暮らす SNSで追ってます！
深夜徘徊事故ゼロって…それはすごいニャ！僕も施設暮らしなので導入希望。次の転生先でお世話係、猫族に頼める世界を期待しています。見守りナイトシフト、ちょっと怖そうだけど頼もしい。
正直、死後の世界でも働かされるとは思いませんでした（笑）。でも猫族が新しい福祉を切り開くなら、次回の魂巡りで猫族に転生してみるのも悪くないかな。夜鳴きパトロールは昔懐かしい響きですね。
猫隊員の“あの世アレルギー反応検知能力”って神秘的！かつて生前、全く異変に気づけなかったうちの家猫を思い出して少し切ない気持ちにも…。霊界の福祉は本当にあたたかいですね。