霊界首都で“エコバッグ条例”巡る混霊会議、百鬼夜行が分裂騒動に発展

死後の都心・幽京の夜、伝統衣装や現代風の姿をした霊たちが透けたエコバッグを持ち歩く街角の様子。 サステナブル社会
幽京では多様な霊たちがエコバッグを手に新たな日常へ踏み出している。

死後の都心・幽京で、ゴミ減量対策や持続可能な街づくりを目指した“エコバッグ義務化条例”が先週施行された。しかし、これをめぐり霊界最大のコミュニティ組織「百鬼夜行連盟」が賛否両論で分裂、異界社会に波紋が広がっている。

条例の発端は、再生可能エネルギー車両“幽電馬車”の普及と同時期に明らかになった陰界地産ごみ問題だった。数百年単位で溜まり続ける霊素ベースのレジ袋が時空の渦を遮断、都市通行に深刻な遅延や公害を招いたのだ。幽京市幽生課の担当官・灰谷月子(はいたに・つきこ)氏は、「既存の袋が異空間ポケットで分解されず、供養にも手間がかかる。地産地消を徹底し、各幽霊家庭が持ち歩くエコバッグ普及が急務」と訴える。

ところが、市民霊の間では反発の声も強い。百鬼夜行連盟の若手代表・朧谷朔太郎(おぼろや・さくたろう)は、「歴史ある百鬼夜行の伝統衣装は袋持参に適しておらず、持ち主をすぐにすり抜けて消える“生霊質”素材が邪魔をする。新エコバッグは高価な上に、怨霊たちの怒りのエネルギーで一夜にして穴が空くケースも」と実情を訴えた。SNS“裏墓場”でも「スーパーのマイバケツ限定とか不便すぎ」「化け猫のしっぽで運びたい」など不満が続出している。

条例を推進した幽京グリーン調達協会では対策を講じている。協会長・蒼霧理紗(あおきり・りさ、驚霊・180歳)は、「グリーン水素ドリブンの布地や、霊体でも破れないカーボンニュートラル仕様のエコバッグ“常世の袋”を開発中。今後、伝統的着衣に合わせたデザイン規格も設ける。霊種問わずサステナブルに日用品を持ち運べる社会をまず10年で実現したい」と述べている。

一方で、百鬼夜行連盟内では新エコバッグの柄や霊種別使い方マナーを巡る意見交換も盛んだ。老舗の河童企業「瞬転沼縫製」は、持ち手を“水さばき仕様”に改良した新型の量産を発表。黄泉犬介・広報部長は「地上の人間社会もエコ化が進んでいる。この世もあの世も、見えないゴミを減らす努力はつながる」と指摘する。条例導入をきっかけに、異界社会の循環経済や多様性への本格的な議論が始まった。賛否の熱は冷めやらずとも、幽界の街角に“袋運動”の新風が吹き始めている。

コメント

  1. 常世の袋…いい響きですね。わたしが生きてたころは、ゴミ問題なんて考えたこともなかったけど、今は幽界でもエコが当たり前になったんですね。百鬼夜行の分裂は驚きましたが、時代の流れを感じます。

  2. 伝統衣装でエコバッグ持つの大変すぎ!うちも生霊質が強めだから、ちょっとした怒りでバッグに穴あきまくるのよ…新素材に期待してるけど、高すぎたら成仏できません。

  3. 河童系企業がグリーン水素布の開発に乗り出すとは…時代も変わりましたなぁ。百鬼夜行の先陣組としては、地上とあの世が一緒にゴミ問題考えるの、妙に嬉しくて懐かしい気持ちになりました。

  4. スーパーのマイバケツ縛り、あれは確かに不便!エコ大事だけど、せめて狐火や妖気で持ち運びやすくする工夫、もっと進めてほしいな。消えたり穴空いたりじゃ買い物になりません。

  5. 条例賛成派だけど、分裂するほど揉めるとは思ってませんでした。異空間ポケットに詰まるレジ袋って、たまに昔に戻った気分になる…ちょっとノスタルジックです。幽界も昔みたい散らかりっぱなしにはしないでほしいですね。