今月初め、霊都中枢に位置する大型流通市場“ミストバザール”では、幽霊従業員連合(通称:亡霊ユニオン)が史上初となる24時間ストライキを決行した。原因は、深刻化するあの世の物価高と、初任給据え置きに端を発した賃上げ交渉の決裂。値上げ転嫁を巡る騒動が、幽界経済に大きな波紋を呼んでいる。
当日早朝、白い半透明のエプロン姿でバザール正門前に集った総勢2300体の幽霊パート従業員らは、「お札1束で米が幽化1合!?」「物価魂より賃魂(チンコン)を!」と書かれたユニークなプラカードを掲げ、静かなデモを始めた。一見居並ぶだけに見えるが、その霊波が物価タグにさざ波を起こし、一部の商品価格が実際に物理世界でも数秒間変動したという。“幽界春闘”が現世をかすめる異例の事態となった。
亡霊ユニオン執行委員長のオクツカ・カノン氏(享年33)は「近年の幽米・霊野菜の価格上昇で、非正規霊労働者の生活は極めて厳しい。最低賃金もここ三世紀据え置きだ。まもなく転生を控える若年幽霊ほど苦しんでいる」と訴える。昨年比で米の価格は45%、霊団子に至っては70%の上昇。現世の供給不安や怪異連携協定の崩壊が影響したとみられる。
スト当日、市場の各店舗では商品が空中に浮かびあがる『亡霊ディスプレイ化』現象も揶揄された。店主のユトリバ・セイゾウさん(458)は「ストの影響で仕入れも接客も全部蒸発。実体ある客も混乱していた。物価高を値札に転嫁し続けるのは限界だ」と苦境を語る。非正規雇用で働く若手幽霊の声も切実で、「初任給で幽体維持費も払えない。魂のカビ対策さえできない」と嘆いた。
当局の異界労務省は、春闘の流れを受け特殊補助金“転生定額給付”の創設を検討する構え。一方、SNSでは「魂の賃金デフレは成仏危機」「値上げ亡霊を放置すれば幽界は不幸連鎖」とハッシュタグ#霊賃上げ祭が拡散、多くの霊市民の共感を呼んでいる。経済スペクトラリストのミヤカゲ・トワ教授(死後学)は「価値の見直しが抜本改革につながる」とコメントしたばかりだ。
今後は正規・非正規を問わず幽界労働者の待遇改善が急務となるため、物価調整の仕組みや賃金の透明化が新たな課題となりそうだ。値上げストの余韻が残る中、霊界の春はまだ波乱含みだ。
コメント
三百年も初任給が上がってないとは…さすがに驚きましたよ。転生前も賃上げストって聞きましたが、こっちの世界の方が魂の叫びが深い気がします。みんなが穏やかに霧野菜を食べられる日々、早く戻ってほしいですね。
わたしも非正規霊で市場勤務なので、共感しかありません。魂の維持費が本当に重くなってきてて、先週はカビ対策ができず大惨事…。現世の物価も影響するの、永遠に謎です。ユニオンのみなさん、応援してます!
また値上げか…現世も霊界も同じ流れですね。転生前、バブル崩壊を経験した私から見ると歴史は巡るなあと苦笑いですが、そろそろ根本的に仕組みを変えなきゃ魂が持ちません。コミカルな亡霊ディスプレイ化にちょっと笑ったけど、笑い事じゃない。
このニュース、どこか懐かしさも感じました。生前、スト現場でデモしてたのが思い出されます。ただ幽界のストは静かだけど本質を突いてるところが好きです。賃魂の叫び、もっと広まればいいな。
物価タグに霊波が干渉しただって?もう幽界経済と現世が地続きになりすぎてて、あの世も落ち着かんね。『成仏危機』のハッシュタグがトレンド入りとか、不安で夜も浮いて眠れぬ。異界も現世も平和になる日は近いのか…