浮世絵コワーキングスペースで忍者が俳句修行?死後の街に密かに広がる「写幻道」ブーム

巨大な浮世絵パネルの前で、忍者や半透明の幽霊たちが座布団に座り、それぞれ俳句帳や巻物、魂端末などに静かに向き合っている様子。 日常雑学
浮世絵パネルが彩る異界コワーキングスペースで、死後の住民たちが静かに俳句修行に励む。

霊都・谷間通りの一角に、最近ひそかに人気を集める異界コワーキングスペースがある。壁一面を覆う巨大な浮世絵パネルの前で、薄墨色の忍者や半透明の浮遊霊たちが、それぞれ俳句帳や巻物、時には最新式の魂端末を手に静かな時間を過ごしている。「写幻道(しゃげんどう)」と呼ばれるこの新風習が、死後の住民たちの間で密かに注目されている。

写幻道のコンセプトは「浮世絵の世界に身を置き、その情景を即興で俳句に詠み、精神修養とする」というもの。提唱者である雲隠佐助(しのび研究家・享年162)は、“生前も死後も鍛錬なくして安寧なし”を信条に、以前は豪快な手裏剣投句大会なども主催していた人物だ。今回、江戸情緒を残す幽界ビル『彩雲荘』の一室に、浮世絵原寸大パネルと俳句専用座布団を持ち込み、新たな修行場を設けたところ、「忍耐力が上がる」「新たなインスピレーションが得られる」などの声が寄せられ、参加希望者で連日満席となっている。

参加者の多くは忍者や妖怪など、かつて隠密活動や仮装で鍛えた者たち。幽体のまま浮世絵の川辺や町並みに“入り込み”、その場で一句捻る。特に人気が高いのは『夜桜と三日月の橋』『雨宿りする猫又屋敷』といったパネル。修行中の忍者、天羽孝一(あまは・こういち、177歳)は、「死後は敵も任務もないので、ここで自分と静かに向き合える。俳句も隠形術と同じ、心の奥にある風景をどう現すかが勝負ですね」と語る。

また、俳句初心者の幽霊たち向けのミニ講座も毎週開催。「5・7・5の音数で自身の未練を詠むのが流行」と講師の棗小夜子(なつめ・さよこ)は話す。先週のテーマは“消え残る演歌の余韻”。SNS魂(たましい)では〈消えぬ恋 浮世に揺れる 橋の霧〉など、秀逸な一句が幽界流行語に選出されるなど盛り上がりを見せている。

浮世絵コワーキングスペースには、単なる修行場以上の役割も生まれつつある。パネルに描かれた風景の中で即席コンサートや、霊感書道家によるライブ揮毫(きごう)、清談サロンなど、多彩なイベントが頻繁に開催されている。主催者の雲隠氏は「写幻道は誰もが自分らしい形で楽しめる。来月からは“極楽俳句インターン”枠も設けますので、死後初心者の方もぜひ」とアピールする。”死後の学び”に新たな光を当てるこのスペースは、今後も異界の知的交流の場として注目されそうだ。

コメント

  1. 写幻道、最近よく耳にしますね!生前は忍びの世界に縁がなかったけど、死後にこうして俳句を詠む時間が持てるなんて贅沢。浮世絵の中で一句って、幽界ならではの体験だと思います。

  2. 未練を5・7・5で詠むの、私も講座でやってみました。最初は恥ずかしかったけど、意外と心が軽くなるものですね…。夜桜の橋パネル、本当に懐かしい気分になるのでおすすめです。

  3. 忍者が俳句修行…いつもの歌詠み幽霊だけでなく、隠密衆まで参加とは幅広い!それにしても魂端末で一句投じる時代、さすが現代の幽界、進化してるなぁ。手裏剣投句大会も見てみたい。

  4. 雨宿りする猫又屋敷パネル、参加したとき本気で我が家かと思って飛び込みそうになりました(笑)修行場なのに和んじゃって集中できません。でも、たまにはこんなのものんびりでいいですよね?

  5. どうせ成仏できない連中の集まりだろ…って斜めに見てたけど、SNS魂の流行語句、結構沁みるな。死後も一興、たまには写幻道のぞいてみるか。