閻魔市暗銀座の株式市場が今年、異例の熱狂に包まれている。異界の妖精大手「ヨウリョウ・エルフ工業」が発表した“転生ストックオプション”型資産運用制度を巡り、投資家亡霊たちと妖精企業群の間で熾烈な獲得合戦が繰り広げられている。死後の経済活動が進化するなか、幽霊たちの新たな資産形成戦略が浮上してきた。
閻魔市証券取引所によれば、「ヨウリョウ・エルフ工業（以下、YEI）」が今春より導入した転生ストックオプション（RSO）は、亡霊や妖怪として投資を続けた後、現世への転生時にも保有株式や配当権利を“記憶と共に持ち越せる”という画期的な制度。従来、死後の資産は現世の記憶喪失と共に消滅していたが、この技術転用により死者は“転生後も資産継承可能”という前例のないインセンティブを得た。
投資家層からは驚きの声が相次ぐ。投資幽霊歴117年の真神ユリナさん（享年32）は、「死んでも配当がもらえたり、新しい人生で株式が蘇るなら、リスク分散の幅が一気に広がる」と語る。各種SNS霊界版でも「現世→冥界→現世で資産無限増殖」や「AI投資アバターを雇い、幽界で24時間グロース株監視」という投資戦略談義が盛り上がっている。また、投資家専用AI「ススミルク・オメガ型」を組み込んだ運用が一部富裕層幽霊間で流行し、従来の魂派閥との間で“小規模霊戦”まで発生した。
一方、妖怪系の不動産投資団体「浮遊邸棋会」などは懸念を示す。「転生ストックオプションの急増で、資産の流動性が時空を超えた次元に拡大し、冥界不動産価格バブルを招きかねない」というのだ。すでに霊界一等地として知られる“月光坂立体墓所”の地価は昨年比50％上昇し、幽霊によるAI主導の自動売買も過熱傾向にあるという。
経済霊術大学の不知火ビャッコ准教授（死神学）は「記憶や魂の“転生バイアス”が資産運用にどう影響するか、幽界経済の持続可能性を左右する重要課題だ。今後は霊的情報開示義務や未来リスクへのヘッジ法の開発が急務だろう」と分析する。今宵も配当霊界SNSには「転生株で2世帯3界の家計安泰」や「幽鬼ストック解体ラリー」など投資談義が絶えない。死者も生者も、資産運用は新たな霊境へと歩み始めているようだ。
コメント
おお、転生しても資産持ち越せるってすごい時代だなあ。昔は執着が仇になるって言われてたけど、今じゃそれが経済の武器になるとは…成仏する気がなくなりそう。
私は妖精だからRSOにワクワクしてるけど、不動産バブルはちょっと心配…。やっぱり幽界でも資産格差とか出てきちゃうのかな？転生後にも株がついてくるなんて、夢みたいだけど。
117年投資してやっと報われる時代が来たか…って感動しつつ、現世に戻ってもまた一から勉強しなおさなきゃならないのでは？って疑問が。魂にもリスク説明義務欲しい。
AI投資アバターなんて、幽界の時代も変わったものだな～。生前は石橋叩いて成仏するタイプだったけど、次回転生では攻めのポートフォリオでいってみようかな。
バブルと聞くとあの世でもあの頃の熱狂思い出すよ。立体墓所の地価高騰なんて、懐かしい匂いがする。来世でまたスッカラカンにならないようほどほどにしようと思うけど、やっぱり手が伸びちゃうなあ。