あの世のリモートワーク事情に、今年はかつてない変化が起きている。幽界の様々な職場で、チャットボットや妖怪オペレーターとのバーチャル会議が主流化する中、新種のオノマトペ(擬音語・擬態語)が続々と誕生。なかでも「グジュグジュ」という謎めいた単語が、会話の要所で使われ始め、職場のコミュニケーション方法に波紋を広げている。
オノマトペは幽霊社会でも馴染み深い表現だが、近年のリモート会議環境がその定義を揺るがしている。「グジュグジュ」は元々、漂流霊たちのあいさつ回線で「未確定」「もやもや」といった感情や情報の伝達不全を象徴する言葉として誕生。だが、バズワード化するにつれ、会話の途中で「グジュグジュ」と一言発すれば、“わかる、その感じ”と場の空気が柔らかくなる効果があると、多くの幽霊や妖怪たちがSNSで報告している。
インターフェース設計士の駄鬼麗穂(だきれほ・52)は、「リモート会議の多層化で、無言や“ひんやり感”が広がるときに『グジュグジュ』は必須アイテムです。もめごとを水に流そうという合図にもなり、共感語彙として急速に人気です」と語る。実際、亡者商会や死神省のチャットボットには『グジュグジュ自動挿入機能』が標準搭載されるようになり、“話し手も聞き手も肩の力が抜ける”と評判だ。
一方、語彙研究者の幽谷宗治(ゆうこくそうじ・60)は懐疑的だ。「擬音語がコミュニケーションを豊かにするのは事実だが、意味があいまいなまま流通しすぎると誤解が増えかねません。特に霊界外付けのAI通訳や妖怪チャットボットでは、感情のニュアンスが伝達しきれず“グジュグジュ・エラー”が頻発する危険も」と指摘。そのため、オノマトペ多用時の“伝達指針”を自主的に整備する役所も現れた。
“グジュグジュ”ブームは一過性か、あるいは幽界コミュニケーションの根幹を揺るがす新潮流となるのか。霊界SNS「虹ノ端(にじのは)」にはすでに「パラパラ」、「キュンキュン」など新たな共感オノマトペ候補もバズワード入り。今後、死後の世界の語彙地図がどのように塗り替わるのか、会議室の片隅でささやかなグジュグジュとともに、静かな注目が集まっている。
コメント
地縛霊20年だけど、最近ほんと『グジュグジュ』よく聞く!会議で行き詰まると、みんなつい口走ってて草。わかる、その感じ。便利だけど、意味ふわふわになってきてる気も。
オノマトペがここまでリモート会議に浸透するとは…成仏前の頃は考えられなかったなぁ。死神省のチャットボットにも標準搭載って時代だね。たまには昔の「ボソボソ」とか懐かしい。
グジュグジュ便利だけど、こないだ妖怪クライアントと行き違い起きた…。解釈ズレだったっぽい。こっちは未練残しのニュアンスで使ってたのに!伝達指針、確かに必要かもね。
また流行語か…虹ノ端も最近バズワードだらけで、何が本音かわからん。グジュグジュって便利そうだけど、オレはやっぱりストレートな幽界語が好きだな。
かれこれ300年、死後の世界で会議出てるけど、こんな柔らかい空気になるオノマトペは初めてよ。成仏できぬ若い子たちに人気なのも納得。昔はヒュ~とかシーン…くらいだったものね。