原宿裏路地で暗躍?幽霊界「ニッチローカル」ショップ、夜の新ドレス旋風

原宿の裏路地で、ぼんやりと光る幽玄なファッションショップの入口に集まる幽霊や妖怪の姿を写した夜の写真。 ファッション
死後のファッションを求める幽霊や妖怪たちが「シノノメ・コレクション」の夜の店先に集まる。

近ごろ原宿の裏路地で、「死後の世界」専門のファッションショップが密かに話題を呼んでいる。名を「シノノメ・コレクション」というこの店舗は、生きている人間には決して見つけられない場所にあり、入店できるのは幽霊や妖怪、稀に許可を得た精霊のみという。死後の新しい“着こなし”を提案し続けるショップだが、その独自スタイルや異界ならではの素材センスが、一部の幽霊モデルやファッション通の間で熱狂的な支持を集め始めている。

この「シノノメ・コレクション」の店主を務めるのは、死後三百年目のファッションデザイナー・九鬼宵彦(くきよいひこ)。生前は無名の和裁職人であった彼だが、あの世に渡ってからは幽霊都市クラウンド街のサロンで独自の感性を磨き上げた。店内には“透ける月影ドレス”や“硝子化した雲の羽織”など、あの世でしか手に入らない素材をふんだんに用いた新作が並ぶ。「デザインの肝は、“この世とあの世の間”の危うさです。その曖昧な境界線を纏うことで、自分の存在を改めて認識してほしい」と九鬼氏は語る。

注目されたのは先日開催された夜間コレクションショー。モデルを務めたのは、成仏前の人気幽霊インフルエンサー・夜見ヶ原みゆき(よみがはらみゆき)や、百年以上前に消えたと言われていた座敷童子モデル・真境名千草(まじきなちぐさ)など多彩な面々。会場では「消え入りそうな薄明かりドレス」や、「落ち葉仕立ての軽やかなサッシュ」など、季節感と霊的趣を兼ね備えたアイテム群が登場し、SNSには「現世ファッションには無い趣き」「死者だけの贅沢」といった絶賛の声があふれた。

奇抜な素材は当然ながらその調達にも工夫がある。幽霊生地ベンダー協会の成瀬霊一(なるせれいいち)会長によれば、「今期特に人気なのは土に還った桜の花びら糸や、夜明け直前の霧を編み込んだレース地だ。現世のデザイナーも憧れる独自ルート」とのこと。九鬼の店ではさらに、廃屋の記憶をフィルム化した「ノスタルジア布」、冬眠中の妖怪から譲り受けた「夢繭グラス」など、耳慣れぬ素材が続々と採用されている。これにより“ニッチローカル”な存在感に、全国から幽霊観光客が押し寄せ始めているという。

あの世への移住者や、最近幽界デビューした若き幽霊たちには「この店のドレスで初対面の自己紹介がスムーズにいく」「他界先で新しい自分に出会える」といった反響も。九鬼氏は「死後にも表現と個性の居場所はある。生者と同じくコーディネートを楽しんでほしい」と語り、近日中には“死神向けスーツコレクション”や“古墳時代リバイバル”など更なる新作発表も予定しているという。静寂と華やぎが同居するこの幽界ファッションの未来は、当分目が離せそうにない。

コメント

  1. 夜見ヶ原みゆきさんのドレス姿、あの薄明かりの中で本当に幻想的でした。現世にいた頃はファッションなんて気にしなかったけど、幽界でこんな楽しみ方があるなんて…ちょっと羨ましいです。

  2. いや〜、自分は三百年前に霊界入りしたけど、着るものなんて白装束しか知らんかったよ。まさか『夢繭グラス』とか、『ノスタルジア布』とか、名前からしてロマンがあるな。今度クラウンド街まで冷やかしに行ってみるか。

  3. 成仏前の自己紹介って、実はめちゃくちゃ緊張するから分かる!こういうおしゃれなドレスがあれば、初対面も余裕になりそう。シノノメ・コレクションさん、今度“精霊向けカジュアル”も企画してくれないかな〜?

  4. デザインの肝が“この世とあの世の間”って、なんか詩的でいいですね。現世ファッションはどんどん移り変わってたけど、あの世では時間も素材も自由。九鬼さんの感性、今後も見守りたいです。

  5. 俺たち怪異も昔はボロキレだったのにな〜、今じゃ幽霊生地ベンダー協会とかあるなんて隔世の感があるぜ。とはいえ“死神向けスーツコレクション”は要注意だろ…皆の魂が抜かれ過ぎないようにな!w