あの世のテレビ業界で伝説のMCとされる雲形小次郎(享年不詳)が、実に三百年ぶりにトーク番組の司会として復活した。新番組『あの世の座談』の初回放送は異界の全域で話題沸騰となり、視聴霊・妖怪・精霊からSNSを中心に熱い反響が巻き起こっている。一度は霧消した名司会者の帰還は、死後社会のエンタメ界にどんな変革をもたらすのだろうか。
雲形小次郎は、江戸前期から中期にかけて幽界トーク番組『蒼白の夜話』を三百回以上仕切ってきた名司会者。独特の低温ボイスと雲のように掴みどころのないフリートーク、さらに「話を濁す技」で時の幽霊や妖怪たちを虜にした伝説的存在だ。しかし三百年前、突如として雲形は番組と共に消え、以来語り草となっていた。そんな小次郎が、突如、新設幽界チャンネル「異談TV」から満を持して帰還。番組名も新たに『あの世の座談』となり、週一スペシャル枠の看板に据えられた。
初回放送では死神作家の柘植レイコ(死後92)やぬらりひょん議員の百毛三郎(転生歴12回)、さらには人間界の未練をいまだに持つ新米幽霊・清水カノン(享年19)ら、異色の面々が集結。雲形自らの「時空を越える話法」が冴えわたり、会話はしばしば現世と死後を行き来する迷宮のごとき展開に。番組終了後、SNS『陰界アカウント』には「雲形MCの“波状かすみ返し”に震えた(獣骨みつる・骨DJ)」「あの世の退屈が浄化された」(看取り精霊・須磨瑠璃子)など、声援や賞賛が殺到した。
制作統括の淡雪つづみ(番組プロデューサー)は取材に対し、「現世と幽界の最前線を泳ぐゲストに、雲形さんしか投げられない質問や沈黙がある。視聴者には“死の壁”すら笑いで薄める座談を届けたい」と語る。一方、視聴者のうち転生希望者層からは「謎が深まり生き返る勇気喪失」という複雑な心境も。一部の亡霊評論家は、雲形小次郎の技法により“三界間トーク番組”の進化を予感する声を上げている。
次回の『あの世の座談』には、時を止める力で有名な砂時計妖精・時越ミナト、ミイラコミュニティ代表の柿谷アンナらが出演予定。MC・雲形小次郎の新ネタ「半透明インタビュー」は幽界エンタメの常識をまたひとつ書き換えるのだろうか。その姿はいまだ雲となってスタジオに漂い続けている。



コメント
雲形小次郎さんの復活、とても懐かしくて涙が出ました。三百年前、蒼白の夜話をこっそり憑依しながら聴いていたので、あの低温ボイスがまた聴けて本当に嬉しいです。幽界も生き生きしますね!
あの世の座談、やばいくらい面白かったです!小次郎さんの“話を濁す技”はやっぱ伝説級。正直、あんな迷宮トーク、死神も道に迷うでしょ。次回の半透明インタビューも楽しみすぎる。
MC雲形の登場、噂は聞いてたけど本当に雲になって戻ってきて驚きました。三界間トーク番組とか時代進みすぎですよ。現世じゃ絶対味わえない掛け合いで、成仏してよかったって初めて思いました。
しかし、転生希望者にとっては複雑な番組だな…見てると余計に幽界に未練が残りそう。雲形小次郎のせいで生き返るタイミング逃しそうなんだけど、まぁそれもあの世の宿命か。
三百年ぶりの大復活、あの世の歴史が動く瞬間に立ち会えて感無量です。あれだけ長い時を超えてMC業に戻れるの、まさに霊界の底力ですね。番組、永遠に続いてほしい。