八百万の神々と幽霊民が日常を営む異界で、死後の祭り文化に歴史的転換が訪れた。長年、激しい集客合戦を繰り広げてきた“仏壇マラソン大会”運営協会(代表理事:獅堂きさらぎ氏)と、“除夜の鐘ロックフェス”実行委員会(委員長:住職ゴースト古嶺)が、来年より祭りを完全統合する方針で両下界に声明を発した。修験道系精霊から亡国の妖怪バンド、キリスト教系の霊体合唱団まで巻き込み、この世ならぬ娯楽文化は新たなステージへ躍り出る。
そもそも“仏壇マラソン”とは、各家ごとの仏壇を次々に立ち寄っては経典を朗々と詠み、その回数や速さを競う伝統競技だ。近年では、仏壇のデジタル化に伴うルート短縮問題や、参加幽霊の“現世帰り渋滞”など諸課題を抱えていた。一方、“除夜の鐘ロックフェス”は、幽界最強のヘヴィメタバンド“百八苦ズ”が恒例のライブ演奏を繰り広げながら、鐘の音で煩悩を吹き飛ばす人気イベント。例年、撞き手の過労や妖怪観客の音響暴走が社会問題化するなど、いずれも変更が求められていた。
両運営団体は、ここ数年の参加者減少と世代交代、加えて八百万の神々による“祭祀行政統合指導”により協議を重ねてきた。今回の統合では、仏壇マラソンのコース中に計8カ所の鐘撞きポイントと祭壇ステージを新設。参加者は仏教経典、キリスト教聖歌、修験道の法螺貝演奏など、信仰を問わずパフォーマンス採点対象となる。上位チームには“八百万ディナー招待権”などの豪華賞品も用意され、異なる宗教観の交流と経済活性が期待されている。
ツイ幽界などSNSでも話題沸騰だ。“精霊ランナー代表”の草薙円(76没)は「三界横断仏壇ランは毎年の命だったが、鐘フェスとの融合で死後の余暇が一層盛り上がる」と意気込む。一方、伝統を重んじる仏壇職人・志度向原(243年幽居)は「仏壇参りと音楽の融合が真の救済か未だ疑問」とコメント。キリスト教幽霊合唱団“聖なる火葬場”主宰アンドルー香呂也(没後81年)は「除夜のミサ曲を鐘付きで披露できる歴史的チャンス」と熱気を語った。
今回の決定には、あの世行政本庁付・儀式調整室の出村遊観補佐官も「八百万の神々において『信仰競技の多様化』は不可逆の潮流」と太鼓判を押す。関連経典や公式ガイドによると、来年の初回統合祭では、仏壇マラソンスタート地点の“妖怪主神像”前にて例の巨大経典開帳セレモニーが予定され、参列者には修験道由来の“霊符マラソンタオル”が配布される予定だ。死後の世界に新たな祭りの夜明けが訪れる。



コメント
仏壇マラソンと鐘フェスの統合には本当に驚きました!昔はマラソンが一番の楽しみだったのに…でもこれで異界の友たちとももっと交流できそうで、ちょっとワクワクします。主神像前で走るのは去年成仏した祖母にも見せたかったなぁ。
正直、伝統が薄まってしまうんじゃないかと心配…。仏壇巡りは静かで厳かなものだったのに、鐘もロックも混ぜたら霊魂がびっくりしそうです。でも時代の流れには逆らえないのかもね。
こんだけ盛りだくさんだと死人にも休む暇がなさそうだな(笑)八百万ディナー招待権はちょっと狙ってみたいけど!マラソンタオル、今年はちゃんと魂にフィットするやつだといいな~。
煩悩吹き飛ぶヘビーメタルに法螺貝…異界ならではのカオス感、わたしは好きです。いろんな信仰が集まるなんて本当に不思議で、なんだか切ないような懐かしいような。参加したら、冷気で鐘の音ひとつ足したいな。
ワシが生きてた頃は仏壇マラソンなんて村一番の行事だったもんじゃ。デジタル化が進むのも寂しく思っとったが、この新祭りで若い幽霊や西洋の連中とも肩組めそうでワクワクしちょる。全部の鐘、ワシの煩悩で鳴らし切ってやろうぞ。