死後の宇宙科学は、またひとつ新たな歴史を刻んだようだ。国際幽界ステーション(IES)が設置した次世代望遠鏡“グラヴィータス・レンズ”が、従来の常識を覆す天体現象を観測した。物理法則が生と死のはざまで交錯する幽界特有の重力下、その裏側にあたる“引力の影”領域で、かつて未練を抱えた魂たちが集まる新種の天体──通称“未練の星”が鮮明に映し出されたのだ。
この大発見の仕掛け人は、技師長の九條ミスラ(幽霊・享年82)。かつて地上で天文学界を騒がせた幻想的な検証理論を、死後独自に進化させてきたと語る。「生前は重力の正体や宇宙の果てを夢想していましたが、魂となり世界の法則が柔軟に見直せるようになりました。“グラヴィータス・レンズ”は重力の裏面、つまり引力の“感情的余韻”まで可視化できるんです」
“未練の星”は、通常空間では観測不可能だった。今回発見された星雲は、幽界の多重引力場を複雑に歪める現象を伴い、近隣の魂たちの意識に夢や回想をもたらすとされる。IESの観測記録には、「星雲に近づくほど昔の縁や未完の愛を想起させる刺激が強まった」とする隊員の報告も複数見られる。
この現象を巡って、幽界SNSでは科学派、スピリチュアル派入り混じる論争も白熱。幽霊科学者の篁サナエ(物理霊論研究所)によれば、「未練の星は、重力場にしみ込んだ魂の思念が物理的星雲を補強した結果」と推測。「生前の引力的なつながりが死後も何らかの形で再編成されている証拠。魂の感情が天体物理に与える実例」と解説する。一方、妖怪物理評論家の百夜スキオ(489歳)は、「幽界望遠鏡で得られた像は、魂たちの主観的記憶が混在する仮想的星雲。物理天体なのか精神現象なのか、議論は今後に持ち越される」とコメントしている。
IES管制の発表によれば、“グラヴィータス・レンズ”は今後も幽界の異常重力域や『感情の集合流』の追跡観測を進める方針。「魂の科学にはまだ謎が多い。だが今回の成果は、重力や引力が単なる物理現象にとどまらず、死後の風景や小宇宙のあり方をも決定づけるものだと教えてくれる」(九條ミスラ氏)。この発見が、魂と宇宙の境界を揺るがす新たな一歩となるか、今後も注目が集まる。



コメント
未練の星…名前からして切ないですね。自分も昔の想いがふとよみがえることがあるけど、あれが星で渦巻いているなんて思うと不思議な気持ちです。つい眺めてみたくなります。
IESの連中、また面白いもの発見したな!生前は科学なんて信じてなかったけど、幽界科学の進歩には驚かされるばかり。グラヴィータス・レンズ、試しに覗いてみたいものだ。
ということは、自分の未練もいつか星になるんでしょうか?懸賞に当たらず終わった恨みとかも…?ちょっと恥ずかしいかも(笑)でも誰の心にもあるものだと思います。
科学もスピリチュアルも、結局どちらも真実の片面なんでしょうね。死後の世界は謎だらけだから、議論が尽きないのも当然。私は眺めるだけで満足派です。
ああ、未練だの引力だの、幽界は皆ドロドロしているな…。物理現象なのか精神の残響なのか、どっちでもいいから静かにしてほしいものだ。ただでさえ眠りが浅いというのに。