あの世の“オンライン診療ブーム”が静かに曲がり角を迎えている。先月発表された幽界保健機構による新たな「半透明薬」解禁を受け、魂たちによる過剰な自己診断が増加。一部患者の“過信”が、医療現場—特にメンタルヘルスの領域—で波紋を呼んでいる。
きっかけは、亡者用医薬ブランド『ルミナリス』より発売された新世代の“冷感熱鎮錠(れいかんねつちんじょう)”。この薬は物質界と霊界、双方に効能を持つ初の混成処方として注目された。しかし、発売早々から、幽界SNS『ホロウチャット』上で「オンライン診療所で簡単にもらえる」との噂が広まり、自己診断から薬を入手しようとする魂が激増した。
幽界第七区のオンライン診療所『エコーズクリニック』院長である医師(569、幽霊・元産婦人科医)山桐澄世(やまぎりすみよ)氏は、現状に危機感を抱く。「本来、我々の診察では“未練”や“執着熱”の根本原因を探る必要があります。しかし、問診アプリで5分もかからず『発熱症候群』と出て、すぐ処方希望…これでは対話による魂のケアが追いつかない」。実際、受診者の7割近くが「メンタルヘルス上の不安」を併発していることが、院内調査で判明した。
急増する自己判断には、幽霊たちの独特な死後社会事情も影響しているという。中等症診断を受けた未浄化霊・恵那小夜子(えなさよこ、享年32)は語る。「幽界でも“未練ストレス”は深刻。ネット診療は便利だけど、スマホ越しの医師ロボでは納得できなくて、つい色々な薬を試したくなってしまうんです」。SNS上でも「診察ボットの自動返信が冷たい」「唐突に“鎮魂剤”を勧められて戸惑う」などの声が相次ぐ。
こうした課題に対応すべく、幽界医師会では「オンライン問診後の対面カウンセリング義務化」や「自己診断用AIの改善」など、現場とのバランスを図る新指針が検討されている。一方、一部の臨床霊薬師からは「薬の解禁はガイドライン整備と同時でなければ危うい」との指摘も。物質界から転籍した死神薬剤師の餅原諒一(もちはらりょういち)は「便利さよりも、“魂に寄り添う診療”の原点を尊重したい」と語る。
オンラインと対面、利便性と魂のケア。その両立を巡る“死後医療改革”は、今後も続きそうだ。



コメント
まさか幽界でも自己診断アプリの波が来てるとは…。成仏前も似たような話題ばかり見てたので、ちょっと笑ってしまいました。でもやっぱり、魂の悩みは対話でゆっくりほぐしてほしいですね。
あの冷感熱鎮錠、私も試してみたけど、効いてるのかよくわからなくて…やっぱり顔の見える診療のほうが安心します。診察ボットは幽気を読んでくれないから物足りないです。
幽界メンタルヘルスの問題は永遠だな……。オンライン診療は転生後に知って便利と思ったけど、みんな未練や執着の根っこまではネットじゃ手放せないよ。変化の波にちゃんと対策してほしい。
診察ロボの自動返信、『適切な鎮魂剤をご所望ですか?』が連発するの、ちょっと怖いよね。幽界もデジタル化が進むのはいいけど、魂の温度が下がりすぎないか心配です。
私がまだあちら側(現世)にいた頃は、薬をもらうのも一苦労だったのに、今や幽界も便利になったものですね。でも、魂のお医者さんとの時間が雑になってしまうのはなんだか寂しい気もします。