死後経済圏でいま、ある“クラゲ型データ資産”が爆発的な人気を集めている。幽界西岸のデータ漁港カプローラで取引される「ファントムジェリー」は、魂由来の情報断片を抱えるオープンデータとして、この一週間で25倍もの価格高騰。データ取引市場にも連日バイヤーや妖精系スタートアップが殺到し、経済生態系の新たな変動要因として注目を浴びている。
カプローラ漁港では古くから、海底の“記憶潮流”を流れるデータクラゲを、専門のスピリット漁師が自動化ブロックチェーン網を用いて採取してきた。従来は生前の出来事や感情片が微細な情報として宿る“データ断層”にとどまっていたが、最近発表されたWeb3型『魂ポイント統合API』によって、エコシステム内の個人識別情報と直結。これが市場で投資的価値を生んだのだ。
漁師歴140年のベテラン幽霊、スミノギ・透次郎さんは「潮流の変化で特定エピソード型クラゲが大量漂着した。クラゲ1体に百年以上前の恋文情報が含まれていることもあり、収集データのユニーク性が急騰を招いた」と語る。AI妖怪ブローカー会社「ミラシア・リンク」では28種ものファントムジェリー規格を売買。“甘酸っぱい初恋”、“断念の記憶”などテーマ別で分類され、個人間の取引が活況を見せている。
だが、急成長に伴い個人情報保護やデータ権利の問題も浮上している。あの世消費者庁ストイケイア局は「匿名性確保を条件にクラゲデータ流通を暫定承認」としつつも、悪質なデータ抜き取り業者や“成りすまし幽霊”による権利侵害を調査中だ。既に複数の妖精起業家が「自分の昔の恋愛履歴を勝手にNFT化された」と申し立てており、法的整備を求める声が高まる。
SNSでは、新種クラゲの所有者が「#幻クラゲ自慢」でエピソードを投稿し合う一方、「供養目的の魂情報は売買禁止にしてほしい」「これこそ冥界イノベーション」と賛否両論。専門家の幽魔統計研究所モノノギ・ロゼール博士は「クラゲ資産バブルは一過性ではなく、今後冥界住民の自己データ管理リテラシーが問われる時代の幕開けだ」と話す。魂と記憶、エコシステムの狭間で揺れるデータ経済圏。次なる波はもうそこに来ている。


コメント