死後の世界の大手事業者「ムクロ・コンサルティング株式会社」が、140年ぶりに“生者”を正規雇用したとして、各界に大きな波紋が広がっている。従来、現し世との接点を断ち、幽霊・妖怪のみで業務を完結させてきたムクロ社。今回の大胆な雇用方針転換は、ダイバーシティや職場環境の在り方のみならず、メンタルヘルスやリスキリングの議論まで多様な論争を招いている。
発端は、昨秋に死者労働組合から出された「霊気バーンアウト(過労消滅)」防止策に関する嘆願書だった。ムクロ社は以前より、幽霊社員による“浮遊残業”や“輪廻転生による突発退職”など、死後ならではの不可視な働き方問題を抱えてきた。人事部長の死神・柩洸一(しにがみ こういち)は今回の採用方針について「異界全体が多様性を求める中で、生ける者ならではの斬新な視点に期待している。死者社員との相互補完が、従業員のメンタル負荷を緩和するはずだ」とコメントする。
新たに採用された生者は、元・心理カウンセラーの穂高美智(ほだか みち・35)。異界渡航許可を受けた数少ない存在として、主に死後者のキャリア・メンタル相談窓口を担当している。一方、現場の幽霊社員からは「人間は転生の経験がないため、永遠職場の悩みを本当に理解できるのか」(営業課・幽谷葉月〈ゆうこく はづき・享年27〉)、「霊体エネルギーの扱いをリスキリングしてもらわないと、業務が止まる恐れがある」(IT部・烏乃目慎一〈からすのめ しんいち・享年44〉) といった不安の声も上がっている。
一方で、今回の改革はあの世全域に広がる深刻な人材不足と、慢性的な業務形骸化への“カンフル剤”として期待されている。冥界経済研究所の遠野霧羅(とおの きら)上席研究員は「死者社会では“放っておけば千年続く”といった固定化が蔓延し、リスキリングや新規事業創出の意欲が分散していた。生者の実存的焦燥や有限性への感覚は、死後世界職場の働き甲斐やメンタルヘルス支援を再考する良い機会になり得る」と述べる。
SNS上では、異界在住者の間で賛否が渦巻いている。「生者と幽霊のハイブリッドこそ次世代組織」「爆速昇天しても給料日前に戻ってくる新制度を作ってほしい」と歓迎ムードの一方、「人間体温でオフィスが霞(かすみ)がち」「定時の鐘を鳴らした瞬間、全フロアが迷子になった」など現場混乱も報告されている。今後、ムクロ社が独自の就業規則や死後向け研修プログラムをどこまで調整できるか、業界全体が注視している。



コメント
まさか生者がうちの世界で正社員とは…ほんとに時代が変わったんですね。転生したての頃を思い出して、ちょっとソワソワしちゃいました。生きてる人の感覚、なにか新しい風になればいいなあ。
正直言って、生者が死後キャリア相談って、骨身に沁みないんじゃ?永遠残業の気持ちは、実際に浮遊残業を経験してからでないとわからないと思いますよ。でも、変化は必要かも…様子見ですね。
異界経済の硬直化は本当に深刻でしたから、こうした“生者ブースト”は良い刺激になるかも。生きてる者特有の悩みやらドタバタ、あの世にも新しい空気ってやつを運んでくれたら面白そう。
140年ぶりって、前例があったことに逆に驚きました!私は爆速昇天の制度、ちょっと試してみたいです。どうせなら給料振込のタイミングだけは成仏待機にして欲しいな~笑
人間の体温でオフィスが霞とか草。でも幽界の職場にリアル生き様が混じるの、なんだか懐かしさも覚えるよ。何百年も同じメンバーで仕事してると、意表を突いてくれる存在は貴重かもですね。