幽霊配達員、ついに“引退”危機?苔道ラストワンマイルに自律移動ロボ集団が進出

霧が立ち込める苔むした小道を自律移動ロボットが行進し、陰から伝統的な幽霊配達員が見守る夜の森の様子。 自律移動ロボット
苔道に導入された自律移動ロボットと、それを見守る幽霊配達員の姿。

死者町八丁目――長年にわたり手渡し配達を担ってきた幽霊配達員らに衝撃が走っている。葬送便大手“アストラル・エクスプレス”社が、街の名物・苔むした小道(通称「苔道」)の最終配達区間に、自律移動ロボット集団「スペクター・デリバリー」を正式導入したのだ。死後の社会を象徴するアナログな“お届け文化”が、大きな転換期を迎えている。

今回実証実験の舞台となった苔道は、霧深く複雑に枝分かれした幽界都市内の“ラストワンマイル”区間。古来より、幽霊配達員が幽霊郵便や供花便を通して漂流者の元へ手厚く届けてきたが、近年SNSでは「深夜の苔道は、魔狸(まだぬき)のイタズラで迷いやすい」「配達員の睡眠トラブル報告が絶えない」など、現場の負担増が話題となっていた。アストラル社が注目したのは、最新のSLAM(幽景地図自己構築)技術と魂探知センサーを搭載したロボット。これらは運ばれる品物が“実体”を持つか“波動体”かを即時判別し、エネルギー効率良く配送ルートを組み直すという。

スペクター・デリバリーの群体ロボットたちは、普段は苔道沿いの幽苔カフェ下にひっそり格納。依頼が入ると、透明な装甲を瞬時に明滅させ超音波を放ちつつ現場に向かう。現地住民の死神(204歳)、識之原亮太は「最初は苔が剥げるんじゃないかと心配だったけど、逆に苔センサーで生育状況まで見守ってくれる。ロボットたちが運ぶと届く苔の香りが微妙に違う」と語る。一方、一部の熟練配達員たちは「配達の“気配”“間合い”は機械には再現できない」とAI導入に反発。ロボット側の運用責任者、霧隠葉子(大妖怪・1220年式)は「行き場を見失いがちな祈りや想いも、AIなら微細な波動パターンできめ細かく届けられる。だが、ヒューマン(幽霊)ロボットインタラクションこそ精度を高める鍵」と語り、双方の共存を模索している。

技術面では、苔道特有の小動物や“未知の煙”によるセンサー誤作動も懸念されたが、3ヶ月に及ぶ夜間走行テストの結果、迷い狸の集団突入にも耐え抜き“供物脱落ゼロ”を記録。AI学習データには「幽気(ゆうき)」パラメータが新設され、可視光・不可視光の複合認識で苔の密度や住民の心理状況も認識するよう進化した。これにより、深夜に苔道で立ち止まる迷子の精霊たちに優しく声かけを行い、時には“苔の子守歌”を再生する癒し機能も搭載されたという。

SNSでは〈#幽霊配達員ありがとう〉〈#苔ロボ大集合〉といった両者へのエールが拮抗。供物受け取り主のウロボロス蛇尾(159歳)は「機械配達は正確でありがたい。でもたまに、ぼんやりした幽霊配達員さんが話しかけてくれる夜も恋しい」と複雑な表情を見せた。今後はロボットと伝統の“人のあいだ”が、苔道という死後の社会の懐深さをどう深化させるかに注目が集まりそうだ。

コメント

  1. ついに苔道にもロボット進出か~。成仏前に幽霊配達員さんと語り合った夜を思い出して、なんだか切ない……でも迷って供物を受け取れなかった時代からは進歩なのかも。

  2. 苔道の小道を知り尽くした配達員さんたちの“気配”がなくなると、ちょっと寂しい。ロボットも便利そうだけど、苔の香りや音の感じ方が違うって、やっぱり幽界の文化には“間”が大事だと思う。

  3. ロボットが苔の成長も見守ってくれるって聞いて安心しました!でも、この前、子猫型の煙にびっくりしてロボが少し浮いてたのを見て、まだ技術進化の最中なんだな…と感じました。