死後の世界にも「事業計画コンテスト」の熱気が訪れている。昨夜、冥界最大級のピッチイベント「アストラル・インキュベーション・ナイト」が開催され、審査員たちの関心を一身に集めたのは新興スタートアップ『リスカロン』。この企業は、死神や幽霊たちが抱える“未完の宿題”や“生前の未練案件”をSaaS(Software as a Service)型で管理できるクラウドサービスを発表し、異界のビジネス界隈でざわめきが広がっている。
『リスカロン』代表のブラナ・クロノス(死神、外見年齢42)は、自身の長年にわたる“導き管理”の現場経験をもとに、霊的存在専用のプロジェクト管理アプリ『ゴーストリスト』を開発した。ユーザーは未成仏案件や成仏後の報告義務、時折発生する“生者側トラブル”(無断除霊や弔い不足など)をクラウド上で一括して可視化できる。特に注目を集めたのは「リスク波動検知」機能。あの世固有の“未完エネルギー”検出システムを用い、チーム編成やプロジェクト進行に重大な障害が生じそうな場合は事前に警告を発する。
本事業は、異界特有の“幽霊的流動性”という新しい課題にも着目。多くの死神・幽霊労働者は、転職=成仏・輪廻という不安定な職場環境に身を置いている。人材(幽材)不足を訴える自治体や霊園管理局からの需要は高く、既に数十の組織がβ版導入を発表している。ベータユーザーの一人、墓守協会監査役のユクレシア・マモル(物の怪、56)は「以前はタスクリストが消えたり、成仏査定が抜け落ちたりと失態続きでしたが、クラウド化で“転写ミス”も激減し、リスク会議がスムーズになった」と話す。
今回のピッチイベント審査員席には、伝統的な死神企業『冥王堂』の幹部をはじめ、半透明起業家たちの姿が並んだ。中でも投資会社“ヘルシンネファンド”のボーディン・ミシェール(幽体専門投資家、91)は「幽霊たちも今やプロジェクト進行バイアスや報告系統のブラックボックス化と闘っている。『ゴーストリスト』が全てを解決するとは限らないが、霊界SaaS市場にリアルな風を吹かせる契機となるだろう」と評価した。
SNS上では「未練案件の“幽的進捗管理”がこんなに便利になるとは」「現世の企業研修でも使いたい」との声が広がり、現世クラウド業界もこの動向を静観しているとの噂も。なお、年内には“壊れた心残り”自動検出AIのアップデートや、プロジェクト消滅時の波動エビデンス保存機能搭載も発表予定だ。異界ビジネスの最前線に突然吹き荒れた、死後SaaS元年――一度成仏したはずの幽霊たちも、再び仕事に目覚め始めた。



コメント
この手のサービス、私が幽界管理局にいた時代に欲しかった!未完案件が積もりすぎて生前リストすら見失いかけてたから、リスク波動検知はマジで革命だと思う。今さら転生して戻れないのが惜しい…
墓守協会のユクレシアさんのコメント、共感します。タスクリストの消失、異界あるあるですよね。思念メモはすぐ消えるし…。これで仕事が減るかもと思うと嬉しい反面、幽的怠惰に拍車がかからないか少し心配も。
死神もSaaS使う時代かー。あの世でも“生産性向上”が叫ばれるとは…輪廻サイクルが加速しそう?まあ現世の残業よりはマシだし、ぼくら物の怪にも導入してほしいです。
未練案件の管理、実は昔から手作業でやっていました。親父(先代の幽霊)が紙に書いた霊的TODOリストを継いでたので、クラウド化には不思議な懐かしさもあります。あの世も変わったものですね。
『ゴーストリスト』の波動エビデンス保存機能って、証拠残すのに便利かも。でも成仏後に過去案件を掘り返されるのは、正直少しコワイ(笑)幽界労働にも監査の時代が本格到来か…