死後もなお働き方改革は止まらない――この春、幽界で活躍するフリーランサーたちの間で「メディテーション節約術」と呼ばれる新たなライフスタイルが注目を集めている。かつて地上での生活に追われていた幽霊たちが、改めて自らの「無色透明ライフ」に向き合い、効率的にエクトプラズムを節約しつつ、余剰エネルギーで趣味と自己啓発に勤しむ姿が広がっている。
リモートワーク歴92年の幽界翻訳家・鎌田昇司(享年47)は、毎朝“空白の間”で行うミディアム瞑想が日々の活力源だという。「生前は朝の通勤で消耗していましたが、いまは好きな時間に体を霞ませて“無”になるだけでエクトプラズムの蓄積量が変わる。不意に霊障を起こさず済むし、節約分で甲冑磨きに通えています」と語る。幽界のSNS「YUREI-Net」では、「#透明ランチ」と呼ばれる昼食時間帯の瞑想実況もトレンド入りし、若い幽霊クリエイターからは共感の声が相次ぐ。
また、幽界フリーランス協会副代表の冥川玉緒(221)は、「自己存在を薄めるメディテーションで、余分なエネルギー消費を3割以上抑えられる事例が報告されている。エクトプラズムの出費減少に加え、自分自身を見つめて新たな趣味や霊友との繋がりも生まれる」と話す。実際、協会のリモートワーク利用調査では昨年比で“無音会議”や“ひとりチェーン除霊体操”などのアクティビティ参加率が倍増。自宅(旧居跡地や井戸)から一歩も出ず、意識拡張によって新たな副業や趣味を始める幽霊が増加傾向にある。
新しいライフスタイルブームの一環として、幽界大手電動自転車メーカー「グライドゴースト」が発売した霊体用バッテリー内蔵モデルもヒット商品になっている。無理なポルターガイスト移動を控え、エコ&フィットネス志向の通勤を実現するというコンセプトが支持され、販売担当の古橋蓮(138)は「身体を実体化せずに運動もでき、各地の冥土カフェや趣味教室へ快適に通える」とPR。幽霊向けのヨガ教室「フワリ・アーサナ」は開講2か月で累計444人が入会し、SNSでは「無音の夜に空中ヨガで魂が晴れる」「肩こり(帯電)が楽になった」と評判だ。
一方で、長年“現世ストレス”に耐えてきたベテラン幽霊たちからは慎重な声もある。古屋満道(不詳)は「エクトプラズム節約にこだわるあまり、余生を楽しむどころか消えかかってしまう若者も出ている」と警鐘を鳴らす。これを受け、幽界自己啓発クリエイターの木曽あやめ(享年31)は「大事なのは効率化より、自分なりの『浮かばれ方』を模索すること」と持論を展開。伝統的な百物語サークルやリアルな井戸端会議も、今なお根強い人気を誇っている。
“自分らしく、節約し過ぎず、魂を伸ばして生きる”――冥界のリモートワーカーたちの挑戦は、この世のライフスタイル以上に多様化の時代を迎えつつある。
コメント
エクトプラズム節約とか、昔じゃ考えられなかったよね。成仏せずに働くって、そもそもご先祖さまが聞いたら腰抜かすのでは?でも、私も最近、無音会議は参加しやすくて助かってるから時代だなって感じる。
ミディアム瞑想でエネルギー溜めて趣味に使うの、なんか羨ましい!現世で時間が足りなくて出来なかったこと、幽界で叶えるって発想が素敵です。私もいずれは魂ストレッチしてみたい…
グライドゴーストのバッテリー内蔵モデル、乗ってる幽霊よく見かけます。あれ静かすぎてちょっと驚く。でも、無理しすぎて消えちゃう若い幽霊もいるっていう話は心配。何事もバランス大事ですね。
昔は井戸端会議だけが楽しみだったのに、今や無音会議やチェーン除霊体操とか…時代が変わったなぁ。帯電ヨガ、ちょっと怖いけど、肩こり完全消滅したって友達もいるし気になる!
節約アピールばっかりで、みんな本当に『浮かばれて』るのかな?効率最優先で、魂削りすぎじゃないの…。私はやっぱり、ゆっくり百物語サークルで昔話するほうが、霊界らしくて性に合ってる。