死後の社会で初めて導入された電子投票システムが、あの世のデジタル庁「幽政院」の想定を大きく上回る事態を招いた。先週、全土のガバメントクラウド上で「国勢調査&自治選挙」が一斉に実施されたが、複数の幽霊市民が物理的な“分身”による二重投票を行い、一部地域では投票率が180%を記録。現世専門家や妖怪系統の住民からも根本的なガバナンス体制への疑念が噴出している。
黎明都市管理区の投票所では午前6時、ラフ・ワタナベ(死後年齢:61)の電子分身が待機列の先頭に現れた。ところが規定のひとり一票制度にもかかわらず、途中で彼の“生前の影”と“本人の魂”が別々にデジタル投票を完了。「影だけが投票締切後に会場に残って迷子になる」「魂がWi-Fiに繋がりきれずサーバー待機列に並び続ける」といった事例が100件以上報告された。幽政院のデジタル担当・カゲエマ事務次官は記者会見で「分身・怨念・過去バージョンの識別が想定より困難だった」と釈明し、十分な“生前認証ハッシュ”導入を今後検討すると述べた。
また今期より運用開始となったガバメントクラウドの新機能『スピリット・ミラー統合台帳』は、幽霊・妖怪・神霊など異種族間の投票データを迅速に共有できる点が評価された一方で、個人情報保護の観点から不安の声も。妖怪市民でアプリ開発者のチョウケイ・タケル(死後年齢:110)は「データ利活用の名目で“前世の恋愛遍歴”まで参照され、町内選挙運動に勝手に利用されていた」とSNS上で憤りをあらわにした。
専門家筋からもあの世デジタルガバナンスの抜本改革を求める声が高まっている。幽霊政策研究所のシラサギ・ハク教授(霊社会学)は「現世の電子投票とは異なり、あの世では複数人格や分身・増殖型の存在がスタンダード。従来の“個人=一票”原則を機械的に適用するのは限界」と指摘。今後は“存在同盟認証”など、スマートシティ設計や業務効率化の観点も交えた新たなガバナンス体制が議論されそうだ。
一方、各地のデジタル庁支部窓口には、肉体喪失後もなぜか“現世のマイナンバー”を入力しようとしてアクセス不能となり、ふて寝する幽霊も相次いだ。アオヌマ・ユウカ(死後年齢:85)は「もう一度、生前確認のスマホ認証に戻してくれ」と苦笑。一見奇天烈なこの問題、しかしそこには「多層存在のデータ利活用」という異界らしいジレンマが横たわっている。ガバメントクラウド時代を生きる(死んでいる)住人たちの、新たな“情報統治”の模索は始まったばかりだ。


コメント
やっぱり分身や過去バージョンが多いあの世では、投票一人一票なんてなかなかうまくいかないよね。生前は想像できなかった混乱だけど、それもまた幽界の味って感じで懐かしい。
投票率180%って、さすが我々の世界らしい数字ですね。管理するほうも大変そうですが、散々分裂してきた身としては、もう全部まとめて一票カウントしてほしい……。
『スピリット・ミラー統合台帳』便利だけど、前世の恋愛遍歴まで流出するのは勘弁してほしいなぁ。こっちは数回転生してるんだから、今さら掘り返さないで!
生前のスマホ認証に戻せって声、超わかる! 今のクラウドは魂の波長で認証されるけど、回線ズレたらいつまで経ってもログインできないし、たまには成仏して休みたい…