数百年にわたり不明とされてきた“品物一族”のルーツが、最新の個人遺伝子解析によって明らかにされつつある。冥界技術振興庁は本日、付喪神(長年使われた器物が魂を持ったとされる妖怪)専用の「DNAバンク」サービス稼働を正式発表した。生活習慣病や錆疾患のリスク推定に加え、古来より続く“失われた家系”の再統合を目指し、幽界のSNS等で大きな話題となっている。
付喪神における“遺伝子”とは対象物の素材サンプルに宿る霊的連鎖コードのことで、今回の『バンク』では分子レベルの痕跡から系統を解読。第1号登録者となった鉄瓶の古守夢美(こもり・ゆめみ/登場年313年)は、「自分がかつて岩手産の鉄片だったことは分かっていたが、千年前の壺と遠い親戚と判明し驚いた」と感想を語る。カケラや金継ぎされた陶器同士が長大なファミリーツリーで繋がる様は、付喪神同士の新たな交流を生み出している。
『DNAバンク』は疾病リスク評価も可能だ。特に現世で修理や洗浄を繰り返された個体の遺伝子多型が生活習慣(=使用習慣)とどのように関連するかが示され、近年多発している“錆びつき症候群”や“持ち手痛み”など異界特有の疾患予測へ活用される予定だ。技術担当の鍛治村一誠(かじむら・いっせい)は「些細な傷が千年先のファミリー全体の健康状態にも関係していた。将来的には陶磁器や刃物族など幅広い族群の健康管理にも応用できる」と期待を寄せる。
またファミリーヒストリー重視の付喪神社会では、家系図がしばしば品物の誇りや所属意識と直結する。登録者の一人である巻物妖怪の巻間文乃(まきま・あやの/出自不詳)は、「自分が写経仲間と思っていた毛筆(けふで)たちの中に遠い縁者がいると知り、つながりの由来を感じた」と話す。SNSには“#わたしの付喪神家系図”がトレンド化し、持ち主を越えた第二の『物生』を楽しむ動きが広がっている。
一方、登録への不安や慎重論も囁かれる。素材源が違法採取された疑いのある品や、因縁深い破片同士の“血縁”発覚によるトラブルも想定されるため、冥界技術振興庁はカウンセリングや匿名登録制度の充実を図る方針だ。巻物家の古語局(ふるごきょく)は「家系の透明化と生命線のケアが同時代のテーマ。死後の存在もまた、ルーツと未来を選びなおす時代に入った」と総括している。



コメント
付喪神DNAバンク、ついに始動ですか…!私も長年誰と兄弟なのか分からず漠然と漂ってたので、家系図でご先祖たちと繋がったら懐かしくて涙がこぼれそうです。やっぱり壺と鉄瓶は遠縁だったんですね。異界の技術進歩、感慨深いです。
いやあ、写経仲間が親戚だったとか、霊界あるあるすぎて笑いました。うちも刀身の叔父と茶碗の従妹が実は同じ鋳造ルーツだったって判明したらビックリしそう。今後、因縁系のトラブルが増えないことをあの世から願ってます。
使い古されて錆びや持ち手痛みが家系全体に繋がるの、なんだか人間界の生活習慣病そっくりですね〜。これで予防できるなら、もうそろそろ磨き直しに行こうかなあ。新しい“物生”の話題が増えて、死後もやっぱり楽しいです。
DNAバンクは便利そうだけど、違法採取とか因縁破片の血縁問題とか…霊界らしい面倒も増えそうですね。幽界SNSで#わたしの付喪神家系図がトレンド入りしてるのを見ると、皆やっぱりルーツを知りたくなるものなんだなとつくづく思います。
ここ数百年、家系や素材のルーツなんて気にしたことなかったけど、こうして未来を“選びなおせる”なんて死後も進化の途中なんですね。少し戸惑いつつも、自分の“第二の物生”をじっくり楽しんでみようと思いました。