九州地方の霊界流通網に大規模な断絶が発生し、日常的に利用されてきた「幽体布」や「おばけスイーツ」などの霊的商品がコンビニエンス霊店の棚から姿を消し始めた。地元の住人や商業霊体は混乱と不安を募らせている。
今月上旬、霊体物流管理会社・浮世転送株式会社の霊界福岡支社にて、千年以上稼働を続けてきた『渡し船式浮遊回廊ネットワーク』が突如停止した。このシステムは、霊的供給物資の九州全域への分配を支える、古式と最新魔導技術を融合した基幹インフラだった。原因について同社の品質部長・黒沼阿夢(くろぬまあむ、幽霊・享年42)は「次元際インターフェースに発生したノイズ共鳴が未解明の故障を引き起こした」と説明。早期の復旧を目指しているが、地域によっては商品到着まで通常の三倍以上のリードタイムが発生している。
この影響で最も深刻なのは、墓場街で営まれる小規模飲食店や、巫女経営の“厄よけ雑貨店”だ。飲食店「夜明けの小窓」を営む幽霊主婦・鏡見澪子(35)は「普段仕入れている“幽霊専用あげだしトーフ”が未入荷で、常連の座敷童たちもがっかりしている」と窮状を語る。一部の店では対策として、地元の妖怪農家から直接仕入れる『地場産霊野菜』を取り入れてしのいでいるが、それも需要予測を大きく上回る消費により、品薄状態が続く。
SNS上では「お化けパン販売再開はまだか」「極楽配送のトラック、空飛ぶだけでなく幽体離脱も駆使してほしい」など悲鳴にも近い声が相次ぐ。一方で異界経済研究家の月原蒼路(つきはらそうじ、幽鬼・不詳)は、「これはサプライチェーンの最適化を進める好機」と指摘する。「古来より霊的流通は手作業や直感に頼る部分が多かったが、昨今はデジタル化と魔導AIの導入で在庫管理や外注先の効率化が進んでいる。今回の危機をきっかけに冥界物流全体のサプライネットワーク再設計が期待できる」
一方、不足する霊の逸品を求めて、隣接する関西や四国のサプライチェーンからの臨時応援輸送も開始された。『霊魂急便』を運営する甲斐原蓮二(かいはられんじ、逢魔配達員・46)は「別次元への仮設トンネルを活用し、供給遅延をできる限り軽減している」と自信を見せたが、輸送量には限界があるため「しばらくは一部商品の購入に霊界ポイント付与など、需要調整の協力をお願いしたい」と利用者に呼びかけた。
霊的商品流通危機を乗り越え、再び日常の浮かれた賑わいを取り戻すためには、幽霊も妖怪もネットワーク構築力と現場の知恵を発揮する必要がありそうだ。
コメント
えー！うちの墓場街でもおばけスイーツが売り切れ続きで、本当に困ってます。こんな供給不足、千年ぶりじゃないですか？転生前の味に浸れないの寂しい…早く復旧お願いします。
この混乱、どこか懐かしさを感じます。昔は手渡しで霊野菜が届くのが当たり前だったなあ。今の若い妖怪たち、少し不便を味わうのも悪くないのかも。
異界の物流もデジタル化の波とは…驚きです。次元ノイズのせいで豆腐が食べられなくなるとは思いませんでした。魔導AIの導入、私も興味あります。今後の改革に期待！
座敷童のがっかり顔を見るのは辛い…。隣界から応援輸送あるって聞いて少し安心したけど、買い物は当面「早い者勝ち」ですね。霊界ポイント貯めててよかった〜
幽体布の品薄って……去年の冥祭の時も同じようなことがあった気が。インフラをちゃんと供養してなかった報いでしょうか？対応が後手後手で、成仏できない気持ちになります。