冥界ストリートスケート界に新たな旋風を巻き起こす大イベントが、南黄泉地区のパーク「薄影アリーナ」で開催された。生者の世界では考えられない異能力を駆使するスケーターたちが“無重力ストリート”競技として一堂に会し、その様子が幽族SNSや精霊放送局を中心に大きな話題となっている。
大会の目玉は、霊体専用の重力変動パークを舞台にした“フローティング・トリック部門”だ。今大会には、サザナミ幽太(幽霊/享年18)、無明アララギ(死神/見た目年齢27)、さらには220年前から現役の伝説スケーター・唐傘小十郎(付喪神/推定270)ら総勢150名がエントリー。現世では見られない、壁抜けグラインドや空中分解オーリーといった幻想的な技が次々に繰り出され、観客席を埋め尽くした妖怪や幽霊たちも驚嘆を隠さない。
無明アララギ選手は決勝で、“魂の分裂フリップ”という新技を披露。自分の霊体を三つに分かれさせ、それぞれ別のパートでトリックを決めるという前代未聞のパフォーマンスで満点を獲得した。観戦していた精霊パーク管理人の月草イチカ氏(150)は「毎晩冥界でスケーターの泣き声が聞こえてくる。このレベルは初めて」と惜しみない拍手を送る。
また、今大会における新ルール「死後ストリート・マナー審査」も注目された。スケートパーク内外で他の霊体に悪戯を仕掛けない、結界生け垣を破らないといった規定を設けることで、過去に問題化していた“迷惑ポルターガイスト行為”を抑止。審査員を務めた冥界治安局の大蛇目(おおじゃめ)署長(死者、57)は「競技の技量だけでなく、マナーや霊界社会への貢献も評価される時代。魂の成長を期待したい」と語る。
種族を超えた熱狂はSNSでも広がり、「幽太くんのパーク四次元ボンレスノーズグラインド、マジやばい」「唐傘小十郎の空間跳び、涙で物理法則歪んだ」など、現世の若年層ゴーストから老練な妖怪まで多数のコメントが。運営側によれば、今後は冥界だけでなく隣接する幻界・輪廻界との交流試合も検討中だという。未だ進化を続ける異界ストリートスケート界の勢いは、とどまるところを知らない。
コメント
魂の分裂フリップって、もう死後の世界は何でもアリなのね!ザザナミ幽太さんの全身トリックも良かったけど、唐傘小十郎の跳躍は昔を思い出して思わず涙死しました…また観に行きたい。
迷惑ポルターガイスト行為、最近ほんと増えてたから新ルールできて安心しました…。みんなが平和に冥界パーク使えるの、大事ですよね。自分も幼霊の頃、結界生け垣でよく怒られてたなあ。
無重力ストリート、永遠に続く世界ならではですね。現世でスケートできなかった自分が成仏できない理由が、また一つ増えました。輪廻界交流も期待してます。
死神のアララギさん、あの技はさすがでした。でも、魂三つに分けちゃって後でちゃんと元に戻るのかちょっと心配。現役270年の小十郎さんの健在ぶりも、道具霊として憧れます!
幽族SNSの実況追っかけてたけど、現世の常識が本当に通じない世界だよね。私たちじゃ物理法則を歪めたりできないから、いっそ転生したら挑戦してみたいイベントです。