冥界北部の柴梨(しらぬい)原野に、待望の“ゼロゴースト排出”死霊発電所が稼働を開始した。幽界では長らく死霊エネルギー発電が主流だったが、過剰なゴースト排出による瘴気汚染が社会問題化。今回の新施設は、幽界インフラの未来を左右する画期的な試みとして、大きな注目を集めている。
従来の死霊発電では、燃焼時に湧出する未浄化のゴースト粒子が空間のバイブレーションを乱し、周辺域を“霧亡地帯”と化すリスクが高かった。柴梨原野の新施設は、堆積した憑依性セルロース廃棄物を原料に、バイオソウルマスを用いた「三重位相浄化炉」を導入。生まれるゴースト粒子を、現場で即座に浄化し無害な“空魂”とする技術で、冥界ゼロエミッション法の達成に向け大型一歩を踏み出した。
発電所長の伏黒サツキ(幽霊技師・153歳)は「私たち死後世界住民も、永遠にこの地を棲み処とする責任がある。ゼロゴースト化は言葉だけの理想じゃない。生きものも幽霊も共存する冥界の未来を担う決断です」と語る。現地では新設された“ソウルバッテリーストレージ”棟も稼働。余剰発電された幽気エネルギーを、高純度水晶型コアに蓄積できることで需給の安定化にも大きく寄与している。
クリーンエネルギー推進会議の別宮アオギリ委員長(妖狐・380歳)は、「これで北部の夕焼け沼地帯にも、瘴気のない夜が戻る」と評価。SNSにも住民から『もう子どもの地縛霊がゴーストスモッグで泣かなくていい』『ソウル粒子ゼロって冥界新時代』など歓喜のコメントがあふれる。一方、保守派の幽鬼議員・宇都宮コウゾウ氏(見習い亡霊・78歳)は「万が一、浄化炉が暴走すれば“転生漏れ”が起きかねない」と、安全性への懸念も示す。
今後は柴梨原野方式が他の発電施設にも拡大できるかが鍵となる。環境技術企業ムクロ・テクノロジーズ社の研究員、雀野ユイリ(座敷童・年齢不詳)は「死霊燃料だけでなく、河童の水車、鬼たちの地熱など、多様なグリーンインフラとの連携が不可欠」と指摘する。ゼロカーボン社会に生きる異界の住人たち――冥界発・持続可能な“死後”の開発は、今まさに加速している。
コメント
まさか冥界でもクリーンエネルギーの時代が来るなんて…転生前は環境問題とか無縁だと思ってたのに、幽界の空気まで意識しないといけなくなるとは驚きです。これで夕焼け沼地がまた散歩できるようになったら嬉しい。
ソウルバッテリーとか、三重位相浄化炉とか、正直よくわからんが、前みたいに瘴気にまみれた夜を過ごさずに済むならありがたいよ。でも浄化炉の暴走だけは本当に怖いから、昔の冥界大爆裂事故を思い出してしまうな…。
うーん、温暖冥界化が進んできたのも死霊発電のせいだったし、新技術は歓迎だけど…鬼たちの地熱も併用にする話、もっと進めてほしいな。みんなであの世の自然を守ろう!
ああ、子どものころ地縛霊だった時、ゴーストスモッグで喉がガラガラになった思い出…懐かしいし、もうそんな苦しみのない冥界になるのは素敵ですわ。時代が本当に変わったのね。
ゼロゴースト排出って、表向きはいいことだけど、その裏でどんな魂がどこに飛ばされるのか…ちょっと気になっちゃう転生組です。まあ、前みたいに瘴気でみんなドロドロ溶けるよりはマシかな?