死後の世界で新たなトレンドとなっている霊体eスポーツ。その頂点を決する「第1回スペクター・リーグ」が昨夜、旧九十九市の幽界ホールにて開催され、異形の観客と熱心な配信者たちの注目を集めた。生前はゲーム機器と縁遠かった幽霊や妖怪たちが、最新型ゲーミングPC“Phantom Core”上で驚異的な腕前を披露する光景に、夜ふかしの異界住人たちは時間を忘れて見入った。
今回のリーグ戦で最も人気を博したのは、全身が透ける新進気鋭ゲーマー、骨川ソウジ(幽霊会社員・享年37)と、妖怪界の伝説的配信者として知られる槻平アヤメ(座敷童子・235歳)の一騎打ち。『Werewolf Battle: Phantom Arena』を舞台にした決勝戦は、両者の空中浮遊を駆使した瞬間移動戦術や、霊圧を利用した特殊コマンド入力など、生者には真似できない技巧が炸裂。SNS上では「骨川の必殺“ポルターガイストダイブ”に圧倒された!」(幽界小学校教員・百目木ツバサ)、「槻平の『手まり分身』、もはや人間界の物理法則超えてる」(元憑依タクシードライバー・藤山ゲンザブロウ)など、実況コメントが殺到した。
リーグの運営を担当した蘆屋キョウタロウ(霊界eスポーツ協会会長・元悪霊)は、「幽霊や妖怪は皆、元来ゲームに憧れていたが、この10年でゲーミングPCの霊電変換技術が飛躍的に進化した。今や触れることのできないPCを、意識だけで操作できる。死後の生きがいがまた一つ増えた」と語る。ゲームタイトルも続々と幽界仕様にカスタマイズされ、プレーヤー自身がキャラクター化してフィールドを駆け抜ける点が、異界eスポーツならではの魅力だという。
会場には妖狐、雪女、さらには造形不明の浮遊するモヤまで詰めかけ、最大瞬間視聴者数は歴代最高の9万霊を記録。人気実況者・雲母カズネ(河童・116歳)は、「現世のプロゲーマーも驚愕のプレイだ。幽霊ならではの無限反射神経と、三途の川越え級の度胸戦に脱帽」と語り、観戦者たちの熱狂を伝えた。
一方、今大会では「試合中にうっかり成仏しかけた」「転生の誘いポップアップが画面に浮上して集中を欠いた」など、霊特有のトラブルも少なくなかった。これについてスペクター・リーグ事務局は「バグや霊障も全て含めて、異界ならではのeスポーツを楽しんでもらいたい」とコメント。地獄府側からは、本大会の盛り上がりを受けて『冥界アーケード・プロリーグ』新設も検討が進んでいる。
優勝を果たした骨川ソウジは「僕たち幽霊だって、本気でゲームを愛してる。死んでも、負けるつもりはない」と配信インタビューで語り、会場は亡者の大声援に包まれた。次回大会は早くも来月、黄泉の国スポーツイベントホールでの開催が決定。幽霊実況配信サービス“霊動ピクセル”での全試合生中継も予告されており、今後の展開に異界中の注目が集まっている。
コメント
まさかあの骨川さんが優勝とは…!生前は見かけたことないタイプだけど、やっぱり死後は何でも挑戦できるなぁ。次は自分も参加してみたい。成仏バグだけは怖いけど(笑)
夜の幽界ホール、熱気がすごかったです!槻平アヤメ様の『手まり分身』に鳥肌が立ちました。昔は百物語くらいしか娯楽がなかったのに、eスポーツの時代が来るなんて感激です。
途中で転生ポップアップが出るの、今後改善してほしい…。あと、浮遊しながらのコントローラー操作って難しそうだけど、みんな練習どうしてるんだろ?コツが知りたい。
幽界住人の反射神経って無限だと思ってたけど、やっぱり努力と才能が必要なんですね。昔、自分もPC通り抜けちゃって怒られたこと思い出して懐かしくなりました(笑)
いや〜、地獄府まで巻き込んでこの盛り上がりとは!現世のeスポーツもなかなかだけど、やっぱり我ら異界のパワーには敵いませんね。霊障すらエンタメ化しちゃう発想、好き。