死後の世界・異界海洋区に新たな波が訪れている。幽霊技師団『フリューガル・イノベーション』が、漂流霊魂と妖怪生態系のための大規模クリーンエネルギー計画を発表した。プラスチックによる海洋ごみ問題は人間界のみならず、幽界の海にも拡大し、海底に棲むクラゲ族や半透明サメ連合、「虚無ガメ」たちの間で深刻な社会問題となっていた。そこで技師団は、風力発電と最新のエクトプラズム分解装置を併用し、『幽界環境中和プロジェクト』として本格始動させる。
「エネルギーの自立と持続可能な生態系回復、その両方を同時に実現したい」——技師団長の河合冷司（かわいれいじ・享年52）は、そう語る。新設される風力発電所は、浮遊する霊的構造物で設計されており、通常の物質世界の風車より格段に大型。これを使って発生したエネルギーで、漂着プラスチックごみや幽霊エネルギーに由来する微細粒子までを回収・再分解する特殊システムが開発された。この『エクトプラズム分解装置』は、脱炭素化とカーボンニュートラルを一体で目指す野心作であり、分解されたゴミは幽界の再生可能資源としてリサイクル利用される。
生態系の専門家である海獣博士・奥幽ユキ（おくゆうゆき・享年38）は、「プラスチックごみが『半透明クジラ』の体内に蓄積し、発光魚群の生息域が狭まっています。今回のプロジェクトで、生物多様性と生態系サービスの健全化が期待できます」と評価する。幽界のSNS上でも「空飛ぶ風車、まるで生きているみたい！」「一度死んでも、地球と幽界を守れるなんて誇りだ」と感動の投稿が相次ぐ。一方で、幽霊漁業組合連盟・関根朧（せきねおぼろ）会長（享年67）は、「電源開発による潮流変化で、伝統的な幽界イカ漁への影響が心配」と慎重な姿勢を示した。
また、このプロジェクトには新興の精霊起業家や若手妖怪研究者も積極参加しており、『死者エコロジー・チャレンジ』と銘打たれた公開アイデアコンペも開催されている。選ばれたアイデアは、実際に現場導入される予定だ。これらの動きに対し、幽界高校2年の浮遊霊・水谷みずほ（17）は「環境技術の進歩があれば死後の世界ももっと楽しくなる。未来が明るい！」と話すなど、世代を超えた連携の輪も広がっている。
技師団は今後、風力発電網の拡充やエクトプラズム分解装置の次世代化を進め、さらに海洋タイプ別のプラスチックごみ対策に乗り出すとみられる。幽界と現世の環境をまたいだ、生と死を越えるサステナブルな挑戦が、今後どこまで広がるか注目したい。
コメント
幽霊技師団の規模に毎回びっくりします。幽界の海でまでプラスチック問題が深刻だとは…もう成仏してるのに現世のごみで悩まされるとは思いませんでした。だけど、海底のクラゲたちも救われそうでほっとしますね。
なんだか夢みたいな計画ですね。生きていた時は環境活動など縁遠かったけど、ここでも持続可能性がテーマになるとは！風力発電でエクトプラズムもクリーン処理できるなら、あの世にも未来はあると感じました。応援してます！
個人的に、幽界イカ漁の味が好きなので潮流の変化はちょっと心配です。幽海の伝統や生業も守りつつ、上手くバランスをとってほしいですね。現世でもそうだけど、環境保護と文化の両立は永遠の課題だなと再認識しました。
『飛ぶ風車が生きているみたい』って、本当に幽界らしい感想ですね！私も海上をただよってた頃、半透明サメたちがごみを避けて泳ぐ姿を見て胸が痛みました。技師団長さんや若い霊たちに感謝したいです。
いやはや、この世を去ってもプラスチックごみに悩まされるとは思わなんだ。幽界も油断できませんな！エネルギー絡みの新技術は幽界で波乱の種になりがち。昔の静かな海が懐かしいけど…時代の流れですかな。