近年、死後の世界でも労働環境への意識が高まる中、「幽霊労働者全同盟(GLU)」が夜間勤務の過重労働に抗議し、史上初となる深夜帯ストライキを決行した。異界最大規模の職場である『常夜灯警備団』をはじめ、幽玄医療センターや百鬼町公営納骨堂など四大職場で幽霊労働者およそ800体が参加し、あの世の社会に波紋を広げている。
労使間の軋轢の発端には昨秋、閻魔省が施行した「霊的労働活性化法」の影響がある。死亡直後の新規幽霊層の労働参入が促進される一方、「夜通し勤務」「供物納品の締切厳守」といった従来の悪しき慣習が温存され、既存幽霊労働者が負担増を訴えていた。ストライキの直接的きっかけは、常夜灯警備団で夜番班が72時間連続で徘徊警備を命じられた件だった。団員の一人、柩谷奈々緒さん(享年32・元保育士)は「生前も夜勤が辛かったのに、まさか死後まで連勤になるとは思わなかった。もう透けるしかないほど憔悴した」と語る。
事態を重く見たGLU委員長の墓森真白氏(享年58)は、「成仏する権利と共に、安らかな休憩と週二回以上の供物タイムを求める。霊的ブラック企業体質はもはや野放しにできない」と訴える。一方、雇用側を代表する幽民産業協議会は「夜間業務を停止すると現世防衛や供物配布に重大支障が出る」として歩み寄りを見せつつも、労働時間の短縮や幽体質強化の義務化など、現実的な対応を模索している。
SNSには様々な反応が集まった。死後1年目のフレッシュ幽霊からは「こんなに過酷だとは思わなかった。せめて生者のLINEスタンプランキング作業は日中に」などの声が上がる一方、長老幽霊層からは「今どきの新参は成仏も我慢できぬのか」と嘆く意見も。異界人材派遣会社・冥途リソーシズの比良坂祐一郎氏(現役閻魔)によれば「年々、オバケの求人倍率は低下する一方。過渡期の混乱はあるが、幽霊たちのメンタルヘルス向上が労働市場に不可欠だ」と分析する。
今回のストライキは8時間で無事終結、常夜灯警備団では幽霊専用の休憩スペース『安魂所』の設置が検討されているという。死後の世界にも押し寄せる働き方改革の波は、供物と鎮魂菓子だけでは癒えきれない、あの世の「働く」を考え直す契機となりつつあるようだ。
コメント
ついにあの世でもスト決行とは驚きました!私もかつて納骨堂で夜勤を経験した身として、共感しかありません。成仏前にもう一度だけ、安らかな休憩を味わいたいものです。
夜間徘徊がなくなるのは困るなあ…。ワシは深夜の巡回が日課じゃったから、最近の新入りは弱いのう。昔は100年連続警備が普通だったのに。
新参幽霊ですが、死後の労働がこんなにハードだなんて知らなかったです…。休憩スペース『安魂所』、ぜひ全国展開してほしい!それにしても、供物タイムもう少し増やしてほしいな。
現世でも異界でもブラック気質は変わらないんですね…笑。いっそ霊的リモートワークとか、生前の経験が生かせる職種を増やしてほしいです。
懐かしいなぁ、私が幽玄医療センターで働いていたころも供物の納品ノルマに追われてたっけ。いつかは死者らしく、のんびり過ごせる日が来るといいですね。