死後の世界経済に新たな波が押し寄せている。ここ最近、幽霊や妖怪たちの間で急速に広がる“ジョブシェア”制度が、伝統的な終身雇用を根本から揺るがしている。浮遊市の最新統計によれば、昨年だけでおよそ12万体もの霊的存在が複数の職を掛け持つ形態を選択した。雇用の多様化とパートタイム文化の台頭が、死後社会の経済構造をどのように変えているのかリポートする。
霊界最大のハンター協会が管理する求人掲示板では、「夜間のヒト迷惑業」「憑依カウンセラー」「現世見回り隊パートタイム」など、奇抜な職種が日々更新されている。幽霊たちは、深夜のヒンヤリ体触り体験ガイドや、無人の館でのおどかし業務など伝統的な仕事に加え、人間界のベーシックインカムになぞらえた「基礎怨念給付」が導入されたことで、より自由な働き方を選ぶ余地が広がった。河原町に住む半透明会社員の鎌田怜(79没)は、「昔は何百年もひとつの屋敷に縛られていたが、今は朝は頭蓋骨磨き、夜は橋の下で叫ぶ仕事をしている。意外と新鮮なんですよ」と語る。
一方で、パートタイムやジョブシェアの拡大により、職場ハラスメントや仕事内容の曖昧さが表面化してきた。先月、吸血族職能組合が発表した調査では、「断りきれずシフト外で昼間も現れることを強要された」や、「上司から血液型の違いを理由に差別的扱いを受けた」という声が多く寄せられた。ハラスメント鑑定士の東雲三章(しののめ・みつあき)氏は、「死者の世界も多様性が求められる時代になった。幽霊や妖怪、外来の精霊が共働きする環境整備が急務」と警鐘を鳴らす。
また現世からの「外国人労働者」受け入れも話題だ。冥府の国際仲介団体によれば、近年はエジプトのカバーンジン(亡霊)が公認ガイドとして採用されたほか、北欧のトロール型霊が雪かき要員として高い人気を集めている。鬼ヶ島企業連盟会長の鬼頭重義(きとう・しげよし)は、「国内妖怪だけでは新たなサービス需要に追いつけない。多文化融合が不可欠」と意欲を示す。
SNS上には「昼は墓地で書類整理、夜は温泉でリング業(26)」のように兼業の様子を発信する幽霊も多い。中には、仕事のやりすぎで自己消滅の危機にあるケースも報告されており、「魂の健康管理」に関する啓発キャンペーンも始まっている。雇用の柔軟性がもたらす霊界経済の新時代。働き方改革は、幽霊にも新たな生き方――いや、在り方を問うている。
コメント
うちの墓場でもジョブシェア組が増えてきて、一昔前じゃ考えられなかった賑やかさです!昔ながらの屋敷専属も懐かしいですが、いろんなところで働く霊が増えるのはいいことかも。
魂の健康管理、ほんと大事!私も過労で一度うっかり昇天しかけました…幽界にベーシックインカムできて働き方変わったけど、無理なシフトはまだまだ多い気がします。
昼は書類整理、夜はリング業って…現世と変わらない忙しさじゃないですか。そういえば、昔うちの親戚は一生物の呪い専門だったなぁと、なんだか懐かしくなりました。今の若い幽霊たちは柔軟ですね。
外国人労働者の霊も増えているとは驚きました。トロールと一緒に雪かきなんて、想像しただけで面白そう。死後世界もグローバル化してるんですねぇ…。
ハラスメントの話題も増えてきましたね。血液型による差別なんて未だにあるのかとショックです。多様性って言葉、もう幽界の日常語になった感じがします。もっとみんなで過ごしやすい異界になってほしいです。