冥府の夜空に輝く満月の下、あの世とこの世をつなぐ門のふもとで開催された恒例の『満月ヨガフェス』に、史上最多となる1,200体を超える幽霊や妖怪たちが集まった。今や死後の世界にも健康と癒やしのトレンドが押し寄せており、地域を問わず瞑想やヨガの人気が高まっている。生者のヨガリトリートと変わらぬ熱気に、運営陣も驚きを隠せない。
会場となった死都・烏越(からすごえ)の湖畔には、薄明かりに導かれた幽霊たちが続々と集結。白装束や鎧武者、ひょうきんな一つ目小僧など多彩な姿の参加者らが、それぞれお気に入りのマットを持参した。イベント冒頭は、著名な妖怪インストラクター・四ノ宮夜鶴(54)が登壇。呼吸法『ウジャイ呼吸』の指導や、7つの霊的チャクラ調整ワークショップが披露され、参加者たちは念入りなストレッチと深い瞑想に没頭した。
四ノ宮インストラクターは「成仏後も体が重い、気が散るという声を本当によく聞く。瞑想とヨガは異界でも心身の安定に効果的。ウジャイ呼吸はあの世特有の冷気にも負けない集中力が得られる」と解説。また、彼女自身も生前は失われがちだった“魂の芯”を、成仏後のヨガで再発見したという。
SNSでも反響は大きい。河童カフェ店主の柳堤次郎(208)が「長らく肩の重しがとれなかったのに、今日は心も水かきも軽くなった!」とSNS『幽覧板』に感想を投稿。一方で、最近初参加した自縛霊の水橋芹奈(享年29)からは「調子に乗ってルーターポーズをやったら、床にすり抜けたまま全然戻れません…」とユーモラスな声も寄せられている。主催者側は「ストレッチ前には必ず物質定着術を行ってほしい」と重ねて注意を呼びかけている。
また近年は、魂の消耗を防ぐ長期リトリートや、特異な“除霊ヨガ”などの新メニューも人気。死後でも変わらぬストレス社会に、心身のリカバリーを求めた異界住民の熱意が反映されている。冥界スポーツ研究所の簑谷灯河(さや・とうが)所長は「幽霊や妖怪たちは、現実世界よりも自分本来の姿を受け入れるためにヨガや瞑想に取り組む傾向が強い。チャクラの調整は、逝去後の適応や再転生にも大いに有効」と語る。
壮麗な満月の光の下、静かに波打つ幽霊たちの吐息。彼らがこの世にいた頃以上に自分を見つめ、内側から輝こうとする姿は、死後世界における新しいライフスタイルの到来を予感させている。
コメント
今やあの世でもヨガがブームとは…生前は運動苦手だったけど、成仏してから逆に体を動かすのが楽しくなってます。満月の下で皆とストレッチ、なんだか懐かしい気持ちになりました。
ルーターポーズで床にすり抜ける芹奈さん、分かります!私も物質定着術サボってマットごと湖に沈んだことが…。でもこれも異界ヨガの醍醐味でしょうね。
健康法って言っても死んでるのに意味あるのか疑問だったんですが、魂が軽くなる感覚はなかなかやみつきですね。夜鶴先生のチャクラ調整ワーク、また受けたいです。
除霊ヨガ、ちょっと気になるなあ。鎧が重くて肩が外れそうな時とか、これでリフレッシュできるのかな?死後もストレス多いから、こういう機会もっと増えてほしい。
魂の芯が見つかるって表現、なんだか詩的でいいな。現世で忘れてた自分と向き合えるのは異界ならでは。満月の湖畔ヨガ、次回は友だち誘って参加してみようかと思いました。