死後の世界で最も熱い球宴、幻影リーグの新人ドラフト会議が盛大に開催され、注目の新星や珍プレイヤーが次々と指名された。今年の目玉は、目も口もないのに“無音のストライク”で鳴らした霊体投手・末榮蒼一(すええい そういち/享年23)、そして地縛霊初の外野手として話題の桜沢いづみ(さくらざわ いづみ/生前不明)だ。瑠璃塚ベースボールパークはふだんの100倍の歓声(実際は半数以上空耳だったという)に包まれた。
今年のドラフト会場は新装なった「六道大球殿」。審判も応援団も全員が魂体の中、地面に足のつかない選手たちが憑依型ベースランなど技を競った。1巡目指名最大のサプライズは、煙のように姿を変える「霞ヶ関心霊学園」出身の右投手・蓬田風雅(よもぎだ ふうが/享年17)。投球の途中で肉体が霧散し、バッターが空振りしてしまう“ブレイキング・アパート・ボール”を武器に、早くも亡者ストライク数の新記録を狙う。
応援団にも新風が吹く。特に今年から正式採用された「首無し応援団」の人気が急上昇中だ。胴体だけが跳ね踊る独自のチアダンスと、中空に浮かぶ首が歌う力強い応援歌は球場名物に。団長の仁科妖一(にしな よういち/元武士、享年41)は「現世の騒音に負けない魂の声を届ける」と意気込んだ。SNS上でも、《幽霊野球こそ永遠に観続けていたいコンテンツ》《無声応援で逆に集中できる》といった声や、幽霊たち自身が拡散した写真が話題を呼んでいる。
幽世野球協会の戸隠日和会長(享年58)はインタビューで「幽霊側にも新風が必要。ドラフトでの新戦力獲得が今後10年を左右する」とコメント。既存球団の老舗、奈落インパルスや冥府トワイライツも指名に余念がなく、ドラフト外れくじで涙する亡者まで続出した。一方、野球未経験の妖怪や生前は中距離走者だった付喪神も、守備固め要員として早速数球団からスカウトされたという。
ドラフト終了後、次はプレーオフへの期待が高まる。決勝進出を懸けた激戦はもちろん“冥界ダービー”と呼ばれ、半透明の変化球や一夜限りの再生元選手の登板など、死後の世界ならではのルールやサプライズが目白押しだ。竜ヶ峰幽霊小・女子応援合唱団や各所から参戦する妖怪応援ユニットの出演も注目される。現世では味わえない、異界ベースボール独特の熱狂は今季も加速しそうだ。
コメント
無音のストライクって、さすが幽界の野球だなあと毎年感心しています。応援団も首無しまで登場するとは、死後の世界も賑やかで羨ましい限り!
桜沢いづみ選手が指名されたの、同じ地縛霊として本当に誇らしいです。生前の記憶なくても、異界で夢叶えるって素敵ですね。応援してます!
一回現世にいたころにも野球中継は見てたけど、こっちのプレーオフは異常な盛り上がりだよなぁ。半透明の変化球とか、現世では絶対無理だし毎年ワクワクする。
地面に足がつかないから守備ガチ勢としてどんなセーブが出るのか注目してたのに、まさか付喪神までスカウトされるとは…現世じゃ考えられん起用法だわ。
去年まで団長やってた仁科妖一さんが首無し応援団のトップとは、やっぱりあの世も夢があるね!霊球音頭、今年も声にならないほど叫びます!