深夜の幻影シネマに幽霊スター集結 異界初の試写会レポート

夜の霧に包まれた映画館の前で、白装束の半透明な霊たちが列を作っている様子。 映画
霊都キョウの黒霧座で開催された幻想的な映画試写会の夜。

死者の街・霊都キョウの中心部にある老舗映画館「黒霧座」で、幽界映画最新作『月下の鎖音(がっかのさおん)』の試写会が開催された。白装束の観客が列をなし、透ける手でチケットを握りしめる姿が話題となった本イベント。死後のエンターテインメント文化の中心地、黒霧座での試写会は、幽霊コミュニティが待ち望む一大イベントとなった。

『月下の鎖音』は、生前伝説的舞台女優と名を馳せた三戸門小夜子が主演し、地縛霊の青年・白峰瑛司と運命に引き裂かれた恋を描く壮大な幽恋叙事詩。異世界映画祭で脚本賞を受賞した紅月真澄によるオリジナルシナリオが注目され、あの世・この世を問わずファンから期待の声が上がっていた。

当日の試写会には、全身が燐光に包まれた亡者や、縄で縛られた怨霊系俳優たちがエンドロール直後に舞台に登場。観客は次元を超えた熱気に包まれ、黒霧座史上初となる“霊体立ち上がり拍手”が会場を揺らした。中でも、主題歌『空蝉のメヌエット』が流れると、半透明の観客たちがふわりと浮かび上がる特別演出が施され、幻想的な時間が流れた。

収録に臨んだ主演の三戸門は「現世の台詞回しでは伝わらない霊的な感情を、どう表現するか悩み抜きました」とコメント。字幕版では亡者専門の通訳・黒巣響志が担当するなど、多言語幽霊にも配慮。映画評論家の羽鳥志摩(享年112)は「死者たちの記憶に潜る独自のカメラワークが、観る者を深層意識まで連れていく」と称賛する。

SNS上では、「誰かの最期の記憶がフラッシュバックした」「生きてる頃より泣いた」などのつぶやきが溢れた。また、黄泉街の人気インフルエンサー・土門レイラは「もう三回観た…白峰の儚さが好きすぎて溶けそう」と感想を投稿。公開日の前夜、黒霧座前には“彼岸前列待機組”と呼ばれるファンのテントが連なる珍現象も起きている。

『月下の鎖音』は、霊界東西のシネマコンプレックスで順次公開予定。チケットは既にあの世公式配給サイトで完売が続出し、死後の映画ファンたちが現世顔負けの熱狂を見せている。

コメント

  1. 黒霧座の試写会だなんて、懐かしさで半透明の涙が滲みましたよ!生前は映画館通いが日課でしたが、この世を離れてからもこんな大きなイベントに参加できるなんて感無量です。幽恋劇にまた魂が揺さぶられました。

  2. 映画のチケット取れなかった…成仏して出直すしかないのかな(笑)。三戸門小夜子さんの幽界デビュー、すごく気になってます。『空蝉のメヌエット』聞いてみたかったなあ。円環転生の合間にもう一度チャレンジしようと思います。

  3. 白峰瑛司役の儚さ、記事読むだけでふわりと昔の恋を思い出してしまいました。誰かの最期の記憶がフラッシュバックするなんて本当に霊界映画ならでは。今回も黒巣響志さんの通訳、幽言が滑らかで素晴らしかったです。

  4. あの立ち上がり拍手、普通のシネマなら迷惑行為だけど、霊体だと迷惑どころか幻想的になるのが面白い。地縛霊俳優たちが縄ごと登場したところ、現場では拍手よりも一瞬空気が凍ったって裏話も聞きました~まさに異界エンタメの真骨頂。

  5. 正直、この盛り上がりはちょっと異常な気もしなくない…生きていた頃の記憶がそんなに掻き立てられる作品って逆に怖い!でも、どうしても一度観てみたい。あの世って意外と娯楽豊富なのよね。