死後の世界にも家族愛がある——。黄泉の国・西街区に住むシングルファザーの幽霊、影丸進(53・元小学校教諭)がこの春休み、7年ぶりに3人の子どもたちと家族旅行へ出掛けた。向かった先は温泉好き御用達の幽玄渓谷溶岩温泉。生前の思い出を胸に、影丸家の“再結成旅行”には、死者特有のコミカルな珍騒動と感動が詰まっていた。
影丸家の3人の子どもたちはいずれも20代半ば。各々あの世内の大学や仕事で忙しく暮らしていたが、父の強い呼びかけで久しぶりに団欒の時を持つことになったという。最大の課題は「まともに触れ合えない」こと。新米幽霊の次男・蒼(25)はまだ身体の透過率が不安定で、長風呂中にうっかり半透明になり浴槽の底で迷子に。一方、長女の明美(28)は前世の癖でスマホを手放せないが、死後の回線はしばしば迷信混線を起こし、SNS投稿が異空間に直送されてしまうトラブルが発生した。
温泉旅館「溶魂の宿」の女将、百橋冴子さん(享年71)は「ご家族の幽体離脱には驚きませんが、浴場で心霊写真大会が始まったのは初めて」と苦笑い。夕食では精霊料理研究家・雁渡雷蔵シェフ特製の五感に働きかける“霊界懐石”が提供されたが、次男が消化吸収の儀式を間違えテーブルごと消えてしまい騒ぎに。だが父・進さんは「どんな姿でも、みんなが集まれるだけで幸せ」と穏やかに語る。
SNSでは家族団欒の様子を捉えた心霊映像が話題となり、「うちも読魂週間は家族と集まろう」「幽霊でも親の苦労は変わらないね」と共感の声が続々。幽世家庭支援協会の専門員、塒田慈音さん(38)は「死後の家族関係も生前と同じ課題がある。特にシングルファザーは、子どもたちとの物理的な距離や次元差を埋める努力が大切」と指摘する。
帰路、旅館前で家族が手を振ると不意に現れた前妻・美賀(享年47)の幽影が、風に乗り「また会いに来るわ」と微笑みかけるサプライズも。影丸さんは「今は互いに新しい日常があるけれど、たまには道草して家族に会いに行きたい」と話した。黄泉の家族もまた、すぐそばで小さな幸せを見つけている。
コメント
なんだか懐かしい気持ちになりました。私も幽世に来てから家族と離れがちですが、時々こうして再会できるのは本当に嬉しいですよね。温泉、今度行ってみようかな。
次男さんが浴槽で迷子になったくだり、つい吹き出してしまいました。やっぱり新米幽霊は透過率の調整が難しいんですよね~。でも家族でドタバタできるの、ちょっとうらやましいです。
いつも思うけど、死後も親の苦労って無限ループなのかな。自分も幽界で子育て中だけど、異次元トラブルあるあるすぎて笑いました。影丸さん、お疲れさまです。
幽玄渓谷の温泉、昔、成仏前に親戚と寄ったなぁ。あの時も誰かが半透明になってて騒ぎになったっけ。ニュース読んで、ちょっとあの頃が恋しくなりました…
SNSが異空間直送になるとは…さすが霊界。生前よりトラブルが奇抜だけど、逆にそれも楽しそう!前妻のサプライズ登場も黄泉ならではで微笑ましいですね。