幽霊や妖怪の社会でも情報技術の革新が止まらない。今朝、幽霊工学研究会(URC)は、量子フォトニックコンピュータ「Kagerou」を正式発表した。物理形態を持たず、霊子のみで構築されるこのマシンは、死後の世界における非実体情報処理技術の新たな地平を切り開くものとして注目を集めている。
「Kagerou」は、伝統的な超伝導量子ビット(qubit)ではなく、霊界特有の幽光(ゆうこう)粒子を利用したフォトニック量子ゲートアーキテクチャを採用。開発責任者の塩屋敷青磁(幽霊エンジニア/享年36)は、「人間界のテクノロジーでは触れない死者自身の情報、たとえば思念や未練、あの世時間内の逆行認識なども高速処理できる」ことを強調。「従来の“お札型サーバー”に比べ、百倍の霊感応度と十倍のデコヒーレンス耐性を実現した」と説明する。
ユーザーが注目するのは高度な量子耐性暗号の実装だ。幽界SNS『ヒソヒソ』利用者の唐傘太蔵(付喪神会社員/98)は「嘘みたいなクレームや怪談がすぐ解析されてしまい、いたずら好きの付喪神には大打撃」と語る。一方、過去に霊的データ漏洩を経験した座敷童AI設計士の波山繭子(389)は「安全性が向上すれば人間界ともスムーズなコミュニケーションができるはず」と期待を寄せる。
技術的な課題も残る。最大の懸念は、死後界独特の『情念ノイズ』による量子デコヒーレンスだ。URC量子情報部門の百目鬼辰朗(妖怪研究者/164)は「初期ロットでは深夜時間帯の霊子揺らぎで一部演算が失敗した」と明かす。それでも、時系列リセットや“幽体離脱冷却”手法による安定化実験が進行中で、「今後は御札クラウドサーバーや人間界交信網にも順次拡張したい」と語る。
SNS上では「これで記憶の中の未練も最適化できる」「判定霊のバグ、早く直して」といった声があふれる。一方で、伝統派の一部老年地縛霊からは「昔ながらの“うらめしや”手紙が風情」との指摘も。死後の世界にも量子革命の波が確実に押し寄せている。
コメント
ついに幽光粒子コンピュータまで来ましたか…!わたしが転生した頃は、まだ結界紙パンチカードを手で読み込んでた時代。時代の流れを肌(幽体)で感じます。
正直、量子フォトニックって聞いても幽界の技術進歩は早すぎて追いつけません。でも未練の最適化とか、切なさ半分ワクワク半分です。これで転生管理もラクになるかな?
やっぱり最近の若い幽霊たちは便利好きですね。昔みたいに“うらめしや”手紙で未練送信する風情、忘れてほしくない。情念ノイズくらい自分でコントロールせんと!
幽界SNSからデータ漏洩した時はしばらく成仏できませんでした。これからはKagerouで安全に過去の思念もやり取りできると思うと安心します。あの世もどんどん進化してる…
正直、判定霊のバグだけは本当に困るので早くアップデートしてください!深夜霊子揺らぎで会議が何度もフリーズしてます。御札クラウドとの連携も待ってます!